物書き医草稿集 Ver.5-3
○ 開業医と組織
  1. 医師会とは (松本祐二)
  2. 保険医協会とは (森永博史)
  3. 介護保険、社会と開業医 (石川貴久)


医師会とは
○医師会
 日本の医師数は平成10年12月で24万8千人余り、集計時点が若干異なるが、日本医師会(日医)の会員数は15万5千名(開業医が52%、勤務医が48%)ほどで、他に全国保険医団体連合会(保団連)などもあるが、実質的に日医が最も大きい医師の組織であることは周知の通りである。日医には開業医の9割が加入しているが勤務医の加入率は低く、全体での組織率は6割程度である。全国47都道府県に支部を持ち、更に約920の郡市区医師会(地域医師会)がある。各地域医師会は法人格を持つものや単なる仲良し会程度の組織もあり、会員数も様々である。医師会病院、老人保健施設、看護婦(士)養成学校、健診センター、検査センター、訪問看護ステーション、地域産業保健センターなどの医療・介護・福祉・教育施設を持つ医師会などでは活発に事業が展開されているが、単なる業者組合的性格だけの医師会も少なくない。
 さて、医師会に入ろうと検討してみると、地域によって状況が大きく異なることに気づく。地域によって状況が大きく異なることに気づく。医師不足の地域では無条件・大歓迎で迎えて貰えるが、医師の過剰地域では場所によっては500万円とも言われる入会金が必要になる。また、「開業して独り立ち」と思っていた矢先、実力者への挨拶廻りなど医師会の古い体質の壁に直面し、医師会への入会を躊躇した覚えのある医師も少なくない。実際に入会してみると、一世代も二世代も前の方々が理事として名を連ねており、大学の教室・医局とのギャップに愕然とすることも多い。しかし、医師会に属することにより、1)煩雑な保険請求事務を幾分か軽減できる、2)厚生労働省や都道府県からの情報や通達が系統的に流れてくる、3)地域での仲間作り(開業医は意外と寂しい職業?仲間外れにされることの怖さ)、4)医療訴訟への不安(その時の後ろ盾を期待)、などから結果的には医師会に入会することになる。その一方、「医師会は封建的な高齢者クラブ」と揶揄し、意識的に入会しない医師も増えて来ており、今後、IT(情報技術)化による医療情報の伝達手段が変化して入会の動機付けが希薄になってくると、殊に若手医師の医師会離れは加速すると思われる。
 実際にいざ開業を始めてみると、競合地区での開業はかかりつけ医制度の推進などで新規の患者さんの獲得が難しい上に、金融機関からの借入金の返済や人件費も予想外に大きな負担となる場合が多い。更に地域医師会からの休日当番、健診事業、予防接種、学校医、産業医などの公的業務が追い討ちをかける。肉体的にも精神的にもダメージを負い、医師会に顔を出すと望まぬ仕事を押し付けられる羽目になり、それを敬遠して会費を納めるだけの幽霊会員と化す若手〜中堅会員も少なくない。しかし、開業して数年を乗り切ると気持ちにもゆとりが生まれ、「自分が単なる一会員であるばかりではなく、実は地域の医療を担っている開業医なのだ」、と認識するようになる。そして地域医師会の様々な事業が自分の日常診療にも関連があり、実は自分の生活の支えにもなっていることに気付くようになる。この辺りの会員の認識の変化を医師会が的確に捉えて行くことが、医師会活動に対する無関心層を減らすキーポイントであるように思われる。
 こういう地域医師会の活動とは異なり、日本医師会は1)医療政策の確立、2)生命倫理における諸問題の解決、3)医療・保健・福祉の推進、4)国際協力の推進などの為に活動している。医師達の組織としては保険医協会などもあるが、行政主導の医療政策立案過程からの脱却を図り、国民の視点に立った独自の医療政策を立案・提言し、政府審議会等の中に埋没することなく、直接政治の場での審議に問うことが出来るのは、日本医師会総合政策研究機構(日医総研、平成9年発足)というシンクタンクを持つ日本医師会であると言っても過言ではない。最近、日医ニュースにも会員の声が取り上げられるようになり、ホームページも国民にも親しみ易いものに更新され、世界医師会長をも経験された現日医会長の広い視野に、今後の開かれた医師会像が期待される。尚、医療政策の確立については医師政治連盟など医師会組織と表裏一体で存在しているが、会員への広報が充分でないこともあり、その内容まで深く理解して活動している会員は少ない。
 一方、地域医師会と日本医師会の存在感に比べ、都道府県医師会のそれはやや希薄である。地域医師会への払う入会金、月々の会費と同時に徴収される中に、都道府県医師会や医師政治連盟に対する分も含まれていることに気付かぬ会員も多い。全国で900を越える地域医師会があることを考えれば、47の都道府県医師会が行政との関わりにおいて果すべき役割の重要性は言うまでも無い。

○医師会のIT化は組織の活性化に繋がるか?
 平成13年末、日本医師会は日医IT化宣言を発表し、医療現場の事務効率化及びコスト削減を図り、解放的なネットワークを形成して国民に高度で良質な医療を提供することを目指す、と述べた。ここ数年、全国的に医療情報ネットワーク化推進事業が展開され、パソコン講習会など様々な取り組みを始めている地域医師会も多く、すでに平成13年度1月現在、その約80%がインターネットにアクセス可能である。この宣言で謳う内容については「言うは易し行なうは難し」であり、医師会内の情報の受け手と送り手の双方に、依然、大きな問題があると言わざるを得ない。
 受け手の会員側には、その気になれば理解は早い方が多いものの、僅かな情報から裏を読むことに長け、玉石混淆の膨大な情報を受けることには案外、強い抵抗がある。また、地域医療に貢献して来た従来のシステム(電話、FAX、郵便)でも何ら支障が無いのに、この医療財政の厳しい折、何故、余計な支出や慣れぬ苦労をして新しいシステム(インターネット)を導入せねばならぬのか、という声も多い。一方、送り手の医師会側には、閉鎖的な「情報は力なり」の古い解釈に固執し、通信を上意下達の一方向性のツールとしか考えぬ方々も多く、果たしてインターネットというツールが持つ開放的で双方向な「情報は力なり」という新しい概念を理解されるだろうか、と懸念される。また、両者に共通した問題として、どんどん進化し時代を風靡するインターネットの世界だが、ハード、ソフト共にその信頼性と言えば一時期のアメ車並み・・・直ぐに壊れてタダの箱、とても怖くて仕事には使えない、という側面もある。医療という職種を考えればサービス体制を含めて日本車くらいの信頼性を組織として担保する必要がある。
 全国的にみれば世代交代が一向に進まず活動が沈滞した侭の地区医師会も多いようだが、地域によってはインターネットで様々な情報を流し、それを個人が処理しながら意見を集約、医師会の方向を決めていく、という新しい手法を取り入れた地域医師会も現われ、IT化に伴い思い切って執行部の若返りを図った医師会も増えつつある。現在の医師の年齢分布を見ると30歳台にピークがあり、この年代の大半を占める勤務医の職場では既にIT化が常識化している。そんな彼らを医師会活動に取り込み、今後の医師会を担う若手・中堅の医師からも積極的な発言や行動を引き出す為には、積極的な医師会IT化推進が必須である。日本医師会の今後の動向を握る一つの大きなキーポイントがこのIT化ではないかと考える。


ホームへ戻る

座談会「保険医協会とは」
安藤:そもそも都市部の個人開業医にとって医師会でさえその存在意義は希薄であり、保険医協会となるとその存在さえ知らない、という方も多いように思います。この保険医協会とはどのような組織なのでしょうか。

森永:熊本県保険医協会は、国民皆保険制度のもとで第一線の医療を担当している開業保険医が中心となって組織した任意で自主的な団体です。今年で25周年を迎え、会員数は3千名を超えています。また、全国では全ての都道府県に協会が設立され、その連合体である全国保険医団体連合会は9万6千名を超える会員を擁しています。

安藤:昨年からの東芝内視鏡問題(注1)では、医師会ではなく保険医協会がバックアップして呉れたようですが、医師会と保険医協会とではその性格に違いがあるのでしょうか。

注1:東芝製内視鏡問題のページ:http://www2.nim.co.jp/

本田(孝):医師会と比較すると色々な意味で対称的なところがあります。長崎県保険医協会の場合は非常に活発に活動していますし、保険改定の説明会でも保険医協会主催の説明会の方が内容も分かりやすいし出席も多いようです。医科と歯科の連携が密なのも特徴のひとつです。医師会に比べれれば総予算も小さく、事務局の数も圧倒的に少ないのに、よくまあこの人数でこれだけの仕事量をこなしているものだと感心します。
 私事ですが東芝内視鏡問題の時には、即座に内容をヒアリングして対応してくれたのは保険医協会の方でした。医師会にも状況は報告しましたが、やはり組織としては動きにくかったようです。

森永:保険医協会は医師会に比べて野党的な存在だからでしょうか、私達の現場の意見に近いし、各方面に対しても結構、要求を出している姿が見えます。例えば2年ごとの医療費改定がありますが、その説明会は明らかに保険医協会の説明会が実践的で、冊子もより見易く編集されています。これに比べて、医師会の意見は私達のような若手〜中堅開業医の意見より、御高齢の先生が経営している老健や老人病院の意見が色濃く反映しているような旧態依然とした感じがします。例えば保険審査についても様々な情報を持っている筈なのに、それが現場の私達に伝わって来ない、という印象があります。
   
安藤:保険医協会は或る政党の政治色が強いと耳にしたことがありますが、この点は如何でしょう。

森永:フレキシブルで開放的だと思いますよ。左寄りだと言われてますが、少なくとも「選挙で誰それを押せ」等というような不快な押し付けは皆無ですね。むしろ、医師会の方が締め付けを言ってきますよね。つい最近も、医師連盟の事が全国紙でも問題になりました。ただ、全国版の保険医新聞はタイトルがややセンセーショナルに過ぎるように思います。一方、医師会の全国新聞は逆にトーンが低すぎて有益な部分が少ない気がして、両者を足して割ると良いと思っています。
 しかし、地域の医師会新聞である森都医報(市会報)や熊医会報(県会報)はよく書かれていると思っています。これは新聞に限らず組織においても、私は足して2で割ると丁度良いのにと思ってます。慎重すぎる部分と積極的部分の姿勢ですね。

本田(孝):森永先生の仰るように、私も内側から見た印象では政党色などというものは殆ど感じません。伝統的に闘争という色彩が強いので、それが左よりに見られる要因の一つではないでしょうか。

川内:父の代には、例の本田先生の件(注1)でも結構、積極的に動いて呉れています。また、当院の事務が電話で保険請求の質問をしても、とても細かく丁寧に教えてくれるなど、或る政党の為に活動しているという印象はありません。いずれにしても、孤軍奮闘している現場の開業医としては、いざの時にバックアップしてくれる頼りになる組織であることが重要だと感じています。

本田(孝):医師会が会員個人の問題にかかわるのは機構として難しい所があるように思います。東芝と係争になった時、相手が大企業だっただけに個人として対峙するのは精神的にも非常な負担でした。保険医協会が組織としてバックアップしてくれた時には心底ほっとしましたし、有り難かったです。

森永:医師会は入会金も会費も市区医師会、都道府県医師会、日本医師会の夫々に徴収され、しかも相当の高額です。医業経営も切迫している昨今、それだけの対価に見合ったことを医師会も会員に対してして行かないと、開業医の医師会離れは加速するものと思われます。医師会は地域の健康を守ることが第一義ではありますが、会員にとっても役立つ医師会に脱皮する為には、現場の開業医により身近な業務に力を入れている保険医協会に見習うべきことは少なくないと思います。また、勤務医の入会ももっと、誰でも出来るようにして、本当に医師の代表集団であるという姿も、今後の医師会に望まれるのではないでしょうか。あらゆる面で、対峙すると言ってはいけないのかも知れませんが、良い刺激役として保険医協会にも頑張って欲しいと思ってます。


ホームへ戻る

座談会「介護保険、社会と開業医
「医療保険の失敗」に対するアンチテーゼとしての介護保険制度の出現により、より医療の市場化が明確になりました。
  1. 民間企業の参入:民間企業の参入。複合経営する医療法人が増加する。
  2. 保険者の強化:医療では保険者が沢山いるため、日本では弱体化している。介護保険では、市町村ということで一元化された。
  3. フリーアクセスの制限:介護保険では介護認定を受けた者だけがサービスを受ける。
  4. 給付の制限(混合診療):最低補償として給付の限界を明確にして、医療保険では認められなかった上乗せサービス、横だしサービスを認める。
  5. 情報開示:介護計画を明示し、契約して、契約内容をオープンにする。
  6. 標準化:サービスや介護の標準化を進める。サービスの中身は弱者救済、救貧対策あるいは所得保障というものではなく、医療保険にはなかった自立を支援する、或いは予防を給付する。
  7. 負担の一元化;保険証は家族という形ではなく、すべての40歳以上の国民が持つということになる。
  8. 定額制:逓減制を伴う、一日当たりの定額制。
  9. 高コストの専門家の排除:医師の役割の相対的低下。より低コストなケアマネージャ、ヘルパーの参入。
介護保険の現状を見てみましょう。
  1. 制度利用率;全国平均76%。施設介護は利用率が高いが、在宅が少ない。或る県のデータでは特別養護老人ホームなどの施設サービスが94・0%。在宅サービスは75・3%であった。ホームヘルプは37・7%であった。施設志向でかつ、退院したがらない傾向がはっきりしてきた。
  2. 患者負担の急激な増加:65歳以上の高齢者は、国の特別対策で、昨年4−9月は保険料を徴収されず、昨年10月−今年9月は本来の保険料の半額を納めていた。全額徴収の開始で、今年は年額ベースで昨年の3倍になる。利用限度額の範囲内でも経済負担が重く、思うようにサービスが使えないという声が大きい。
  3. 市町村による減免措置拡大: 高齢者の保険料は五段階に分けられ、所得の低い人にはもともと減免措置が盛り込まれている。それでも、年収二百万円の人と、生活保護対象に近い人の保険料が同じになる。所得が低いほど相対的な負担が大きい「逆進性」がある。
  4. 介護保険は家族介護の負担軽減になっていない:某県のアンケートの結果では介護者の肉体的・精神的な負担は「(介護保険以前と)変わらない」が半数近くを占めるほか、「増えた」も20%を超え、必ずしも家族介護の負担軽減につながっていない。
  5. フリーアクセス制限(ゲートキーパー): 同上のアンケートでは、ケアマネジャーを通してサービスを依頼することが面倒が30%台で、最も多かった。
○現場で見られる問題点:
石川:一年半が経過してトラブルはあるものの何とか稼動しています。今、最も問題になっているのはケアマネージャー(ケアマネ)の質ではないでしょうか。勿論、看護婦のケアマネは医療系サービスに強く、保健婦、ホームの指導員は福祉系サービスに強いことは当然ですが、他方のサービスに対し余りにも知らなさ過ぎる面があります。ケアマネの受験資格にも問題があるのではないでしょうか。猫も杓子も取り合えず受験、という傾向があり、薬剤師や鍼灸師などが資格を取って、果たして何割がケアマネの仕事をするのでしょう。年に1度以上の講習を義務化しているケアマネ講習会ですが、その内容にも問題があります。保健所の査察で受講の有無だけが問われ、講習内容などは問われていません。
 次に介護保険を充分に理解していない医師が案外、多いのにも問題があり、その為にケアマネとの間でトラブルが起きたりしているようです。矢張り、医師会が率先して教育活動を行って欲しいですね。さて、介護保険の医師意見書は殆どが内科医のかかりつけ医が書いていますが、要介護の認定を受けている利用者は、整形外科や脳外科のお世話になっている方が多いようです。病院の脳外科や整形外科での治療が終わり、その後、近くの内科医がフォローすることが多いのでしょうが、おかしいと思います。
 また、新規参入の事業者の経営はどうでしょう。私達のように訪問介護とケアマネを診療所の一部門として行うには充分でしょうけど、これだけで採算を取ろうとするには無理があり、実際、既に営業を中止している事業所も少なくありません。

川内:ケアマネの資格には確かにそういう問題もありますが、現実には何らかの施設で兼務でケアマネを行う場合が多く、それでも収支が合わないのに、質を求めても無理だと思います。先ずはケアマネがその本来の業務だけでも充分な収入を得られるようにすべきでしょう。介護保険制度はうまく動いているように見えるかも知れませんが、実際には表に出ない所で、様々なトラブルが起って居ることを忘れてはなりません。志が高くても、経営的に成り立たぬ所が非常に多いことが問題です。

諸橋:町には社協、特老、特老に併設したデイサービス機関しかありません。外部から通所サービスに参入してくる機関もありますが、採算面の問題で少数です。訪問看護は馴染みがなく、受け入れ難い環境です。介護保険が出来る前はとてもお寒い現状でした。入浴すらままならない老人、療養環境も極端に悪い家庭がままありました。介護保険が出来、行政、特老、社協の意識の中に大きな変化が生まれました。というか、変化せざるを得ない環境となりました。ようやく出発点に立ったという感じです。デイサービスの普及、ヘルパーが家庭に入る機会が増えることにより老人の療養環境は少しずつ改善してきました。その陰には補助金の力、そして何とかこの制度を利用・普及させて環境を良くしようとした私達の影の大きな努力もあります。
 ただ採算面から考えれば社協は赤字でサービス提供時間は限られております。また経済的、家庭的な問題でまだサービスを受けることを手控えている家庭も多くあります。地域では問題点も多くありますが、逃げる訳にはいかないので、何とか工夫して少しでもより良い体制にと考えています

石川:さて、「既に電子請求で介護保険制度は立派に稼動している。だから医療保険も直ぐにこのノウハウを生かして電子請求を始める」というような意見も聞かれますが、介護保険は全てゼロからのスタートしたものであり、医療保険は何十年も試行錯誤をしてここまで辿り着いたのもの、という違いを国保連は理解しているのでしょうか。国保連の介護保険担当者にパソコンのことを尋ねても全く要領を得ず、他のどの担当者に尋ねたら良いかも返答できないのです。まだ紙で請求している事業所があるのには私も驚きました。当初、無償パソコンが配られましたが、送付されたのは最低レベルのパソコンでとても伝送には耐えられないと考え、今はお蔵入りとなっています。

川内:まず電送に関しては開始当初から全てが不明確でした。このような金銭の絡む場合には、必ず各事業者と受け取り先でテストをして確かめるのが常識ですが、何回、国保に尋ねても「上司からテストは不要であると言われている」との一点張りで、唖然としたものです。実際、稼動してみれば結果は悲惨な状況でしたし、国保の窓口の問題、パソコンの問題など石川先生の言われた通りで、現在、改善されつつあるとは言え、内容たるや稚拙と言わざるを得ない状況です。私も当初から電送に協力して来ましたが、キチンとした対応が見られぬようなら、今後は紙(帳票)に変えざるを得ないと思っています。

○開業医にとって介護保険とは:
川内:介護保険制度が出来るまで、この分野は主に医師達による医療と行政による福祉により支えられていました。高齢化に伴う国民の介護への不安に対応する為、この制度が作られた訳ですが、利用者(患者)側からすると、特に高齢の方にとっては、医療保険と介護保険の使い分けをすることは難しいようです。

石川:実際に介護保険が導入されてみると、現場の実情にはそぐわない面も多々あるようです。本来、介護保険は名前の通り、訪問介護や施設介護だけを賄う保険にすれば良かったのではないでしょうか。訪問看護やデイケア、居宅療養管理料などの医療関係も介護保険に含めた為、いろいろとトラブルが絶えません。
  現場ではケアマネと医者のどちらに指導を頼むべきかを迷う利用者の方が多いようです。認定を受けた時、指導するのはケアマネですので、医師はケアマネに適切な指示が出せるように充分に介護保険を理解していなければなりません。主治医意見書も一辺倒の意見のみではなく、その人その人の特徴を記載する必要があり、まして判読不能な汚い字で意見書を書くことなどは言語道断です。その為に医師会の「医見書」なるソフトも出ていますので、もっとこれを利用すべきでしょう。

安藤:介護認定審査会に出席して他の職種の委員の方々と一緒に審査を進めてみると、認定における主治医意見書の重要性と、その重要性の周知がまだまだ不充分であることを実感します。百聞は一見にしかずということで、主治医意見書を書く先生には全員、介護認定審査会の委員をして頂くという地域医師会がありますが、隔週でずっと続くこの審査会の負担を出来るだけ多くの医師で分け合うという意味でも、これは良い方法かなと思います。

外山:いろいろ問題点はあることは承知の上で、それでも敢えて言わせて頂ければ、「介護」を社会全体の課題として広く認知させ、陽の当たるところへ持ってきたという一点において、私は介護保険制度をとてもポジティブに捉えています。利用者とサービス提供事業者との関係が成熟することも重要でしょうが、それと同時に「地域として介護保険制度を育てる」という視点も必要だと思っています。その為に地域の医師会は多くの貢献ができますし、また逆に、そうしなければ地域連携の中で医師(会)は頼りにされないという認識でいる次第です。

○今後、介護保険制度に望むこと
石川:例えば、訪問看護、通所リハビリ、訪問リハビリなど医療保険に含まれるものは、できれば今まで通りに医療保険に戻して頂きたい。介護保険が始まってから医療経営が少しずつ変わりつつあります。私の場合、以前は自院はスリム化して、なるべく他の施設のサービスや検査を受けさせようとしていました。ところが介護保険が始まり、自分の事業所ですべて賄おうとして、今では訪問看護は勿論、訪問介護、居宅支援事業所と多機能化しつつあります。国内の診療所はスリム化と多機能化の二極に文化しつつあります。どちらが良いのか、これからが見ものですが、痛みを分かち合う政治を目指している内閣が存在している以上、これ以上の設備投資は危険でしょう。

本田(忠):できばかりで、まだどういう傾向になっていくかは判りませんが、現段階では、資質の問題や労働過重などの原因でゲートキーパーが十分機能していないこと、負担率が高すぎて十分利用できていないこと、家族介護の負担感が減っていないこと、の三点を至急に改善すべきであろうと思います。


ホームへ戻る