歯科医師研修の問題についてのページ

医科であろうが歯科であろうが、医療の現場ではいつでも何処でも
緊急事態が起こり得る・・・一体、誰がどのようにして備えてきたのか。
決して他人事ではありません。ちと、考えてみたいものです。(安藤)

1. ニュースから
2.松浦先生@市立札幌病院からのメール
3.山本先生@東海大からのメール(歯科医師の救急医療研修の問題に関する要望書)
4.「救命救急センター等での歯科医研修問題について」のペ−ジ

1.ニュースから
  1. asahi.comより:
    1. 歯科医が専門外診断(01/10) 医師法違反の容疑で書類送検 札幌市立病院
    2. 歯科医の救急研修、書類送検で現場に波紋 (02/11) 「中止」を決めた病院も
    3. 歯科医の救急研修 書類送検で現場に波紋
    4. 資格外診療医師を起訴 市立札幌病院 (2002/2/13)
  2. 北海道新聞より:
    1. センター部長を医師法違反で起訴 市立札幌病院の専門外診療で札幌地検


2.松原先生@市立札幌病院からのメール
松原@市立札幌です

 本日、起訴されました。数日前から、略式起訴で罰金でどうだという誘いが数回ありました。2−3万円です。全く納得できませんでした。当初から、起訴か不起訴かという考え方でした。歯科研修医が起訴猶予になったことは喜んでおります。彼らは研修医だったのです。しかも病院が認めた人たちです。
 今回の検察の起訴理由は例の87号です。これからはこの87号との闘いです。歯科研修問題も大きな意味でのメデイカルコントロールだと考えています。そのためには、歯科医師の医科での研修のガイドラインは必要だと考えています。
 10年戦争が始まりました。今研修を引き受けている施設はびびることなく歯科医師の研修を継続して下さい。上級医師の下で行う研修は業ではありません。研修なのです。わたしはまだ有罪ではありません。だから起訴を選択したのです。それがわたしの生き様だからです。皆様のご理解と、ご支援をお願いいたします。


3.山本先生@東海大からのメール
山本五十年@東海大学です。
ご無沙汰しています。
多忙にて、なかなかレスできない状況が続いています。

私の無二の親友である松原先生が、昨日、札幌地検から起訴されました。

松原さんは、表に出て責任をとって闘うことを表明し、研修を受けた歯科医師を守りました。『メディカルディレクター』としての範を示されました。記者会見で松原さんは『医師法違反というなら、責任は歯科医師ではなく私にある』とはっきり言っておられたそうです。本当に立派です。

誰も困っていない、誰も不利益をうけていない。にもかかわらず、熱意と善意が起訴されてしまいました。このような愚かで、珍奇な事態が起こりうるとは、信じ難いことです。しかし、やがて、真実が明らかになるに違いありません。

私に入ってきた情報を総合すると、告発した札幌市保健所も、書類送検した札幌中央警察署も、本意ではなさそうです。厚労省の指導課も歯科保健課も迷惑しているのではないでしょうか。

このような医療行政が行われる限り、私達は、安心して救急医療や救急医学教育に従事できません。このツケは、やがて国民に回ってきます。

私は、札幌地方検察庁に、次のような要望書を送っていました。これから長い公判が続くでしょう。10年、かかるかも知れません。その間、歯科医師の医科研修のガイドラインの策定は、進まないかも知れません。厚生労働省の医事課(長)は、その責任が追求されるでしょう。多くの関係者を巻き込み、多大なエネルギーを費やし、泥沼になることも予想されます。公判で裁かれるものは、厚生労働省関係者かも知れないのです。札幌地方検察庁が、厚生労働省の医事課(長)の代理を請け負った形にならざるを得ません。国民対厚生労働省の図式が生まれてきます。しかし、松原先生は、厚生労働省の施策に貢献してきた救急医です。起訴されるべきではなかったのです。

最後の勝利を勝ちとるまで、国民医療の名において、松原先生に連帯し、支援を続けたいと思います。

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      歯科医師の救急医療研修の問題に関する要望書

今般、札幌市立病院の松原 泉医師と歯科医師三名が、札幌市保健所長から告発され、書類送検に至りましたことを聞き及びました。そこで、第1に、松原 泉医師について、第2に、歯科医師の救急医療研修について述べさせていただきます。

  1.松原 泉医師について

松原 泉医師は、厚生労働省および総務省消防庁の病院前救護やドクターカーに係わる施策に深く関与してこられまして、現在、国や学会が進めている救急医療改革事業を指導していただいております。私は、松原医師とともに、過去2年間、厚生労働省、総務省消防庁およびその関連団体の委員会に参画してまいりましたが、松原医師は、常に指導的な立場で委員会を牽引され、国の救急医療行政に大きな影響を与えてきました。厚生省の『病院前救護体制のあり方に関する検討会』報告書(2000年)、総務省消防庁の『救急業務高度化推進委員会』報告書(2001年)ともに、松原医師の存在により、極めて現実的で、改革的な内容にまとめあげられたと申し上げても過言ではありません。

松原 泉医師は、また、北海道と札幌市の救急医療発展の原動力となられました。とりわけ、札幌市消防局と協力し、市立病院構内に設置された札幌救急ワークステーションは、松原医師の尽力がなければ実現できかった事業であります。この札幌救急ワークステーションの創設により、札幌市内とその周辺地域の救急救命士の資質は著しく向上し、ワークステーションを基地としたドクターカー制度の整備により、従来、救命できなかった患者さんの生命が救われるようになりました。札幌市消防局と市立病院の協力を得て、松原医師が推進した救命効果検証委員会の調査活動では、札幌市のデータがいかに優れているかを示しました。
こうした札幌市の事業の成功は、我が国の救急医療関係者に多大な影響を与え、札幌市立病院と救急ワークステーションを訪問する視察団は後を絶たず、札幌市は一躍、我が国のモデル地域となりました。

松原 泉医師は、札幌市、北海道だけでなく、我が国の救急医療の発展に最も貢献した指導的な医師であると言うことができます。松原医師は、救命の志が高く、組織指導者として極めて優れており、責任感が強く、善意と熱意に溢れております。今回の歯科医師の救命救急研修に係わる問題で送検されたことは、札幌市民の救命に携わってきた松原医師の名誉を著しく傷つけるものであり、誠に遺憾であります。

  2.歯科医師の救急医療研修について

医政医発第八七号の内容が、書類送検の根拠になりました。この内容が、歯科医師の『業としての医行為』の説明であれば、誠に当然のことが書かれているに過ぎません。歯科医師が、急性心筋梗塞や脳血管障害の治療に業として行ったとすれば、医師法違反に問われるべきであります。しかしながら、事実は、歯科医師は医師の指導下で『研修としての医行為』を行っていたのではないでしょうか。全国の救急医療施設では、これまで、多くの歯科医師が救急医療の研修を行い、『業としての医行為』の質の向上を図り、もって、国民の輿望に答えてきたと理解しております。
歯科医院では、局所麻酔剤の局注によりアナフィラキシーショックを起こした患者が少なからず発生しております。この場合、直ちに適切な救命治療をしなければ死に至ることがあります。そうした生命危機に陥った患者さんに対応する能力はどこで磨くべきでしょうか。各地の救命救急センターや大学病院では、臨床研修委員会の責任において、歯科医師に研修の機会を提供してきました。例えば、ハチに刺されてアナフィラキシーショックを起こした患者さんから救命処置法を実地に学ぶことをとおして、ショックを起こした患者への対応、救命救急処置の能力を磨いてきました。そうした医師の熱意と善意により、歯科医師の資質が向上し、国民は、安心して、歯科領域の歯科診療を受けることができました。

多くの他の医療職も同じです。救急救命士は、救急救命士法と関連法により、『業としての医行為』として、末梢静脈路確保は、心肺停止の対象患者に限定されています。しかしながら、厚生労働省が策定した病院実習ガイドラインでは、末梢静脈路確保は、心肺停止以外の患者さんにも、『指導者の指導・監視のもとに実施が許容』されています。もし、心肺停止患者に限定されると、静脈路確保の効果的な実習は出来ません。充分な実習が出来ないことを、現場で実施するように指示することはできません。歯科医師には、気管内挿管も薬剤投与も、許容されています。ただし、歯科領域の疾患に限定されています。だからこそ、救急救命士と同様に、医師の指導・監督のもとで救命救急医療の実習を行うことが必要になります。歯科領域の疾患に限定された研修では、国民の負託に答えうる充分な研修ができないからであります。

従来、歯科医師の医科研修については、ガイドラインが策定されていませんでした。そのため、多くの救急医療施設が、善意と熱意と義務に基づき、歯科医師に救急医療研修の機会を提供してきました。ガイドラインが策定されていない以上、何をどのように研修を提供するかは、各々の医療施設の裁量に委ねられてきました。これらが、突然に医師法違反に問われますと、我が国の救急医療施設は、歯科医師の医科研修から一斉に撤退するに違いありません。歯科医師の救急処置能力は低下し、国民は安心して歯科診療を受けることができない事態を招くことになります。

厚生労働省の官吏のなかに異論があります。医政医発第八七号は、『業としての医行為』の一般論を明らかにしたものであり、歯科医師の医行為を限定した歯科の医行為本質論であり、個別の研修問題を解釈したものではないとの意見が少なくありません。もし、個別に適用するなら、歯科医師の病院研修ガイドラインを策定し、その上で、ガイドラインに反する医行為に対し違法性を問うべきであるとの見解が、厚生労働省とその関係者に少なくありません。

また、最近、得た情報によりますと、9,000名以上の救急医を会員とする日本救急医学会の理事のほとんどは、今回の歯科医師研修問題については、起訴されるべき事案であるとは考えておりません。学会としては、可及的速やかに、国と学会によりガイドラインの検討に入りたいとの意向があります。

貴検察庁のご判断如何で、全国の歯科医師研修の有り様が決定されることになると理解しております。どうか、松原医師および歯科医師の告発と書類送検により全国に蔓延しつつある医療現場の混乱をおさめていただき、国民医療の安全な確保へ向けて、適正な解決をはかっていただきますよう、心からお願い申しあげます。

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       神奈川県伊勢原市望星台
       東海大学医学部総合診療学系救命救急医学
       東海大学医学部付属病院救命救急センター
        TEL 0463-93-1121 内線3770
        FAX 0463-95-5337   
        E-mail y50@is.icc.u-tokai.ac.jp
           山本五十年
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