NHKスペシャル 「超高層ビルが都心を覆う」
2003年1月18日(土)放送

タイムリーで参考になる良い番組でした。皆様にもその内容をお伝えしたく、
ビデオを見返しながら要旨を整理、参考サイトにリンクしてみました。(安藤@荒川医院)
東京で空前の超高層ビル建設ラッシュが起きている。今年完成する地上百メートル以上のビルは28棟。一方、既存のビルでは空室が急増、新たな不良債権になる懸念が出てきた。なぜ不況下で巨大ビルが次々に建つのか、変貌する東京を追う。
●都心の現状
  • 今年(2003年)以降、都心では地上100m以上の超高層ビルが70棟を越える予定。
    • 昨年10月、品川区青物横丁がビジネス街に一変した。5千人以上の社員を抱えるIT関連企業が同地域の超高層ビルに移転したからだ。今後、この7haの土地に超高層ビル5棟が建設され、1万6千人が働く新しい街が出現する。バブル崩壊で最新のIT設備を持つ高層ビルの建設費が半減し、賃貸料が既存のビルと同レベルになった。回線の高速化、床の二重化、各フロアのコンピュータ管理室、光ファイバー、2倍の電力容量を後ろ盾に、グローバルな競争に打ち勝つと言う。
  • 東京各地で超高層ビル建設計画。
    1. 昨年秋、丸の内に丸ビル(180m)完成。更に100m以上のビルが8棟計画されている。
    2. 港区汐留の国鉄跡地には12棟、6万人が働く最先端ビジネスセンター。
    3. 品川駅前東口には150mのビルが7棟。
     これらのプロジェクトは90年代の不況の中で誕生した。更に品川:11棟、新宿:6棟、飯田橋・秋葉原:5棟が企画され、20数万人分の新しいオフィス・スペースが誕生する予定。
●推進する動き
  • 都市開発プロジューサーの梅沢忠雄氏(東大客員教授)の話:
    • 「土地代の安い今、新しい都市に作り変える。頭脳が高い密度で都心に住んでいることによる新しい価値の創造。先進国の都市がその方向性にある。チャレンジすべき。」
  • 都市再生基本方針: cf)東京都における都市再生特別地区の運用について
    • 超高層ビルを立てやすい規制緩和:従来、容積率で規制されていたが、規制緩和(1000%に規制⇒緑地・公園で開放すれば1500%を認める等)により収益率が上がり投資を生む。
    • 土地の流動化を通じて、不良債権問題の解消を図る。民間の投資を都市に集中させ、経済再生の実現の起爆剤にする狙い。⇒ 161都市再開発プロジェクト、事業総額8.3兆円。
    • 2002年、都市再生特別措置法を制定。緊急整備地域(新宿、秋葉原・神田、東京・有楽町、新橋・赤坂・六本木、臨海部、大崎)ではどんな高さの高層ビルでも建設可能とした。都市に流れ込む投資は更に増えると期待。
●懸念する声
  • 2003年だけで28の超高層ビルがオープンする。大量のオフィス・スペースの供給(2003年問題。既存のビルを苦しめている。既存ビルの空き室急増。空き室を抱えて不良債権化するビルが急増し、景気を一層、悪化させかねない。
  • 空き室率は史上最悪だったバブル崩壊直後に迫る勢い。働く人の数は団塊の世代の定年と少子化の影響で現象。2010年問題と呼ばれる労働人口の減少により空き室率増大。
  • 元建設大臣の大塚雄司氏の話:
    • 「国が需要と供給を見極めずにビルの建設だけを促せば、第二のバブル崩壊が起きる。その見極めが都市計画であったが、無秩序な規制緩和により、再度、不良債権を生もうとしている。」
日本橋にて
  • 400年の歴史を持つ日本橋、老舗が30件以上ある。相続税対策でビルを建てたが(日本橋の中小ビルは600以上)、バブル崩壊で空き室増加、超高層ビルの誕生で加速。⇒ 2004年1月に20階が1棟、05年、大通りに38階が1棟、更に八重洲口には100mビルが3棟予定。
  • 18代続く老舗の蒲鉾屋「神茂の井上社長。
    • 1991年建築の地上8階地下1階の自社ビル。12億円の半分近くを返済中。当時48,500円(=45,000円+管理費)の家賃が今は17,000円くらいに下落。
    • 賃貸料を3割さげて店の経営を圧迫。本業は安定するも収益はビル経営に廻さざるを得ない。味の決め手は職人の300年受け継がれた技であり、職人数は減らせない。
    • 当時、ビル敷地は20億円以上と評価。突然の父親の入院で、相続で10億円もの納税が必要。日本橋での営業を守るには、多額の借金があれば相続税が大幅に減額されるから、借金をしてビルを建てるしか無し。物納すれば継続できない。
    • バブル崩壊⇒地価下落⇒ビル経営悪化を超高層ビルが加速する。2階・7階の改装に1,700万円を投資。
    • 昨年暮れ日本橋にて:佃煮屋貝新の石丸孝雄社長:不良債権処理、ビル手放し、二束三文で買い安く貸す、値崩れ。手間が面倒。手放したい、が多い。扇子屋伊場仙の吉田誠男社長:希望より2割低い(1.5万)。相場の下落(来年1.3万か)。
    • 井上氏:「昔から苦しいときはあったと思いますから、私だけでは無いと思いますから、なんとか乗り越えて守り抜かねばいけないと御先祖様の為に思う。」
●政策に振り回される・・・cf)首都圏白書のあらまし不動産金融危機の真相
  • 第三次全国総合開発計画・・ cf)全総の頁地域開発と交通整備
    • 1970年代から、通勤ラッシュ、交通渋滞、経済格差という一極集中解消をスローガンに周辺都市への分散を進めた。19万人が働けるみなとみらい21。15万人の幕張新都心。業務核都市(横浜・川崎、厚木、八王子周辺、浦和・大宮、つくば周辺、千葉、木更津)が東京を取り囲む配置。
    • この都心にゆとり、周辺都市に発展をもたらす計画が、今、都心の超高層ビル計画と対立。
  • バブル時代、都心ではビル建設ラッシュ・・・cf)バブルの原因
    • 1985年の首都改造計画:2000年(昭和75年)までに新たに5000ha(超高層ビル250棟分)が生まれると予測。
    • 6大都市商業地の地価は85年を境に急上昇。内需拡大や超低金利に後押しされ、都内に1万5千の中小ビルが建設された。
    • 周辺の都市にも影響。横浜みなとみらい21:4,200億円のオフィス街開発が立ち往生。千葉では3,000億円、幕張新都心:4割が空き地のまま。
  • そして今、
    • 品川シーサイドフォレストでは、
      • 5年前まで幕張に自社ビル計画の某社:
         本社は横浜8箇所、東京に2箇所、幕張に1箇所オフィス。平成4年、幕張に自社ビル、横浜本社との2箇所に集約の計画。バブル崩壊後、企業分散が進まず都心に集中。昨年10月、転先を品川へ変更。オフィス環境は改善したが、社員の3割は遠距離通勤に。
    • 周辺都市への打撃。東京により経済の落ち込み悪化。
      1. 幕張:12の企業が計画変更。30haも空き地。土地売却代金が入らず資金不足。
      2. 横浜:8ビルは7棟空き室、3棟空きビル。
      3. 人口増の見直し:横浜:19万⇒5万、千葉:15⇒4万、さいたま:5.7万⇒1。3万、厚木:2万⇒1.2万
●東京駅を挟んで
  • 丸の内側では
    • 超高層ビル同士の競争。昨年9月丸の内ビル(36階180m)。6階までブランド店・レストラン。オープン後4ヶ月で1000万人。フロア7割に50社入居して全館満室だが・・・丸の内でも今後、7棟建築の予定、に加えて、八重洲で駅前に3棟予定。昨年、区の構想で新たに4棟が予定。
  • 八重洲側では
    • 中央区都市整備部長(吉田不曇氏):
      • 八重洲・京橋・日本橋地区地権者の不安に対して立地の良さを強調。「現状では良くならない、超高層ビルで対抗するしかない。競争に打って出ないと街の未来はない」と地権者を説得。「都市再生法を使って超高層ビルを建てる。地権者に保有していたビルに見合うスペースを提供しても、余りフロアをオフィスとして売却すれば建設費など全ての事業費を賄える」・・・厳しいテナントの争奪戦にも必ず勝ち残れると飽くまで説得を続ける構え。
    • 反応は様々。4つの予定地は結論はまだ。
      • 賛成派:成川孝行町長。反対派:松田朝夫氏「床ばかりが出来る。」
●エピローグ
  • 2003年、東京に新たに供給される超高層ビルのオフィス面積は、東京ドーム48個分に迫る勢い。街の存亡を掛けたビル同士の戦いが始まっている。

●協力:ニッセイ基礎研究所、生駒データサービス、日本不動産研究所