新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(令和2年5月29日)
(動画はこちら。文中、スライド(SL)番号はこちらを、ページ(P)番号はこちらを参照)
脇田:専門家会議座長の脇田です.副座長の尾見先生、専門家会議のメンバーとして東北大学の押谷先生、座長の求める専門家として北海道大学の西浦先生に参加して頂いています。
 本日は13時30分から第15回の専門家会議を開催しました。そこで議論をしたことをまた報告を致したいと思います。
 まず。最初に私の方からこの流れをお話しますけども、4月7日にで感染者が多数に上って医療体制も逼迫したということで、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、大阪府、兵庫県、福岡県ということで緊急事態宣言が発令されました。4月16日には更に北海道、茨城県、石川県、岐阜県、愛知県、京都府ということで合計13都道府県が特定警戒都道府県と指定され、更には全国に特定地域ということで、人の移動を最小化する観点から、全都道府県地域について緊急事態措置を実施すべき、ということで対象になりました。
 その後、幸いなことに外出自粛の要請等の接触機会の低減によって新規感染者数が確実に減少したところでございます。その後ですね、区域判断の考え方というものをお示しして、順次緊急事態措置を実施すべき区域とはしない、ということで、5月14日には39件、21日には京都府、大阪府、兵庫県の指定の解除が行われ、5月25日には残る北海道、千葉、埼玉、東京、神奈川にてついても緊急事態措置を実施することが無くなったということになりました。
 その間多くの市民の皆様のご協力によりまして、全国における新規感染者数のオーバーシュートの軌道に乗るということは免れて、緊急事態宣言の解除に至ったワケでありますので、皆様には心より感謝を申し上げたいと思っております。我々、その非常事態宣言によって医療提供体制の逼迫或いは崩壊ということを免れるとともに、そのクラスター対策が可能なレベルに新規感染者数を抑えるということを目標にしておりました。全国の感染状況は既にピーク時に比べれば大幅に改善をされておりますけども、引き続き感染は報告されているということです。既にこの一部の地域で見られていますようにクラスターの発生が見られておりますので、そういったとこには今後も対応していく必要があります。この感染症は再度の感染拡大が予想されますので、我が国も長丁場の対応が必要になる、とこの専門家会議でも議論をしております。
 一方で、今、感染状況が比較的落ち着いているという状況ですので、この時期に次に対する備えをするべきであるということで、今回はの提言を纏めましたので、それを実行していただきたいと考えております。またのこれまでの専門家会議としてですね、我々も全力で走って来たワケですけども、今後どのような在り方が良いのかということも検討していきたいと考えております。
 では今日の状況分析と提言について、副座長の尾見先生から説明をして戴きます。
1.はじめに(SL1)
 脇田先生から話があったので少し簡単にするが、まず、本当に今回、市民の皆さんがご協力して戴いた事への心から感謝ということ。次は、長丁場が予想されるということは前から申し上げている。3番目が大事だと思うが、感染状況が落ち着いている今こそ、今後の新たな感染拡大に備えて、検査体制、クラスター対策、医療提供体制の強化、治療法、治療薬などの確定に全力で取り組むべきだと政府に是非お願いしたい。
 今日の一番のテーマ、これまでの取り組みや対策、或いは緊急事態宣言の効果について、一応今、落ち着いたので、この時点での評価をするのが我々専門家の責任だと思って、この時点での評価、勿論、また後で再評価することはあるが、この時点で評価するのが私どもの務めだいう思いで、これを中心にお話しをさせて戴く。

2.感染状況等の評価について
(1)感染状況(疫学的状況)
 次のスライド(SL2)。日本の対策、欧米の先進諸国と比較して感染者数の増加が抑制され、死亡者や重症者が低いという観点があった。何故こうなったかは次ページ(P7, 表1)からやるが、その前に、韓国を始め東アジアの総死亡者数は総じて少ない。中でも台湾は非常に低位ということで、その主な理由、台湾はSARSの経験を元に、以前から日本に比べて準備が良く出来ていた。台湾に於いては欧米からの移入の規模が、国のサイズが日本より小さい。より早く水際対策による対応を講じていた(P13)。
 下のグラフ。日本の報告者ベース(P8. 図4)。これから第2波か、第3波かといろいろあるが、我々は専門家としてのこれからの議論はこうしたい。中国の武漢湖北省から来たのを第1波、ヨーロッパやアメリカから来たのを第2波と一応定義したい。これから起きることは第3波となるか。代表的な時系列でいつやったかを書いてある。
 次のスライド(SL3)、欧米諸国と比較して、日本の死者数や重症者数が低位に抑えられた理由、いろんな事があって、今、完全にサイエンスとして研究しているワケでは無いが、現時点での我々の判断は、国民皆保険で医療へのフリーアクセス、地方でも医療の質がレベルが高いのは間違い無く重要な要素の1つ。2つ目は公衆衛生の観点で、全国に整備された保健所が重要な地域の公衆衛生の役割、このレベルも高かった、このシステムがあった、ということは間違いが無いと今の処、判断している。3つ目は、市民の衛生意識の高さ。例えば子供でも外から帰ったら手を洗う。生活習慣が清潔を重んじること。緊急事態宣言の前後から、政府や都道府県からの行動変容の要請に対して市民の方々に協力をして戴くこと。などがあった。これらは多くの日本人、国内外も納得しているのではないかと思う。

(2)医療提供体制
 知られていないが、上に加えて、国内、ましてや国外に余り知られていないことが、感染が低く抑えられた要因ではないか、というのが我々の判断。いろんな事があるが肝だけをお話しする。大きく分けて2つ。1つは中国武漢湖北省由来、或いは欧米からの感染拡大を比較的早期に感知して抑えられたのでは、という側面。もう1つの側面は我が国のクラスター、これが一体、どんなことかということに焦点を合わせて説明したことがないので、これについては少しスペースをとって説明をしたいと思う。
 ドイツと日本の比較(SL4, P8, 図4)。ドイツと日本の感染者数の比較、日本の感染者数はかなり低いので、日本の実際の数字(実線)を10倍に拡大した点線で見ると、ドイツの方が早く立ち上がっていることは明らか。日本は最初にダラダラあって少しずつ拡大した。ドイツはダラダラが無くて、やおら立ち上がった。これがドイツと日本の違い。日本は中国の起点とする急激な拡大を阻止した。それをもう少し詳しく調べると、感染の初期の頃、2月18日と25日迄に見付かった感染者の数、日本は他国と比べると圧倒的に多い(P9?11)。同じ時期にドイツは少なく、イギリスもフランスも少ない。欧米に比べて(台湾に比べても)初期の頃に検知をしていることを表している。イタリアも同じように10倍で比較した(SL5)。日本は最初の中国由来が少しずつ上がってピークを遅らせているが、イタリアはドイツと同様、ダーンと急激に来ている。他の欧米諸国も基本的にはパターンは同じ。
 もう1つのテーマ(SL6)。「クラスター、クラスター」と言われるが、他の国では聞かなかったと思う。何故、クラスターか、を2つのスライドで説明し、理解して戴きたい。日本は早い段階で、新型コロナウイルスの「感染症の特徴」では無く、「感染の伝播」、感染がどのように伝わるかの特徴をかなり早い時期からクラスター班、保健所の人達で、ちょっと違うんではないかと発見していた(P35)。
 何かというと、2009年の新型インフル(H1N1)もだが、或る感染者が居て、どの人でも1.6人とか2人に感染させるとかいう感染拡大はスムーズ。これが普通。ダーンと階段で上がるワケでは無い。今回の新型コロナは、現場から何が判って来たかというと、ここが大事(P36・37)で、重症、軽症に拘らず、感染者が仮に5人居たら4人は、統計学的に80%は「感染しているが、他の人の感染をさせない」ことが、かなり早い時期に判っていた。残りの1人は「他の人に感染をさせる。場合によっては沢山感染させる」、1人に感染させる。沢山感染させるとクラスターになる。押谷さんや西浦さんが初期の頃から「これが不思議だ」と何度も言ってくれた。それが普通のインフルエンザとコロナとの「感染の伝播」という観点で一番違うことに、日本では早くから気付いていた。この感染症はクラスターを形成する。感染初期にはクラスターを制御できれば感染拡大を一定程度制御できる、という認識を持った。
 次のスライド(SL7)。H1N1との違いを説明したが、クラスター対策は外国でもやっている。日本とはどこが違うか。殆どの諸外国と日本との比較。積極的な疫学調査等をしているが、日本以外の殆どの諸外国はプロスペクティブな接触調査、前向きな調査をしている。日本はそれに加えて「遡る」、過去に遡る調査(レトロスペクティブ)。日本は前向きもやるが「遡る」(P38)。ヨーロッパで行われている前向きな調査とは、新規の感染者が居たとすると、この人を起点に濃厚接触者を洗い出して、濃厚接触者が発症するかどうかを前向きに調べていく調査(=前向きな接触調査)。日本は、コロナの伝播の特徴がH1N1とは違うので、それを踏まえて、複数の感染者の過去の行動を調査して、どこに行ったとか過去の行動を調査して、共通の感染源の場があるかないかを突き止める。突き止められる場合は、クラスターがハッキリ判ったということになる。その場所、いままで報告されてきたクラスターの場所を見付けて、その場の濃厚接触者を網羅的に把握して、感染拡大の防止をする。そういうことを「遡り(さかのぼり)」、「後ろ向き」よりも言葉が良いので。我が国は、共通の感染源を探し当てて、濃厚接触者の網羅的な接触調査をして、感染者の入院措置などをして来た。
その中で、「三密」という発生し易い場所の特徴があった。日本のクラスターをやって来た人達が、どうもこの特徴・概念を「三密」という場所が多い概念を、こういうことが判って来た。それを初期の段階から、「三密が大事でそれを避ける」と言って来た。それを避けることがクラスター感染の拡大防止に繋がるというメッセージ、注意喚起をして来た。

3.新規感染者数・死亡者数のこれまでの推移等に関する現段階の評価について
(1)新規感染者数・死亡者数の推移について(P13)
(2)緊急事態宣言の効果について(P14)
 次が、緊急事態宣言の効果(SL8)。これも大事。報告日ベース、新規感染症のピークは4月10日、宣言が出されたのは7日。今度は報告では無く推定をする。西浦さん達が統計処理をすると、感染日が推定できる。感染のピークは4月1日、7日より前。宣言前から市民の行動変容で、その時点で新規感染者が減少傾向にあったことは間違い無い。後になると、宣言後は実効再生産数が再反転せず。宣言期間中は1を下回り、低位で来た。
 配布の本文には書いてい無い、定性的には書いてあるが、参考・西浦の分析(SL9, P5, 図2)。東京のデータの分析(P6., 図3)では、緊急事態宣言の前に下がったと言ったが、実効再生産数が更に低下しているというデータ。報告ベースの患者数(左図)と感染から発病までに要する潜伏期間の分布を基に、感染者の増殖率を推定し、増殖率から実行再生産数(右図)を得た。緊急事態宣言の前に、3月25日に実行再生産数は0.82に少し下がっている。ところが4月7日、宣言が出されると更に0.52に下がって、低位に維持されている。こういうデータを基に緊急事態宣言の効果について、今の処の効果を評価出来た。
(3)見えてきた課題(P16)

4.今後の政策のあり方~次なる波に備えた安全・安心の為のビジョン~(P16?)
(1) 次なる波に備えた「検査体制」の更なる強化について(P19・20)
 我々もマスコミも市民もみんなが判っていることは繰り返さないで。まずは検査体制(SL10)。日本の市民感覚からすると、一番問題だったのは、PCR検査等が迅速に行われなかったということがある。今後の方向性、前駆症状、初期症状の解明を含む、重症化する前に知りたい。検査体制の拡充、重症化してからではなく早いうちから早期診断が重要。相談から検査までの日数が掛かったので、迅速かつスムーズな検査体制の構築は極めて重要。
 もう一つ、抗原検査はPCRに比べて感度は低いが、感染力が高い人を感知出来るという特徴を生かして、二次感染が起こる可能性が高い、どこを優先するか、おしなべてやるのでは無く、二次感染が高い場所・人を特に集中的に検査をすると、具体的には院内感染とか施設内感染、その周辺をやる、そういう考え方をしたらどうか。PCRと抗原検査をうまく役割分担をしていくことが求められると考えられる。
(2)次なる波に備えた「医療提供体制」の更なる強化について(SL11, P21)
・平時の医療提供体制との切替えについて
 緊急事態宣言、東京などは危機寸前だった。感染が下火になって少しだけ余裕が出来た。都道府県が使うチェックリスト(P31)にかなり詳しく書いたが、チェックをして備えて欲しいと。各都道府県が参考にして欲しい(P41?)。
(3)次なる波に備えた「保健所機能」・「サーベイランス」・「感染予防対策」の更なる強化について(P22)
(4)治療法・治療薬の確立、ワクチン等の開発の促進について(SL12, P23)
 治療薬など肝だけを言うと、重症化してからでは無く、早く見つけて治療をしたい。どういうことを政府或いは学会にお願いしたいのは、長丁場には是非やって欲しいこと3つ。
 抗原検査は、新型コロナは発症前に感染力がある。2日前から発症後0.7日がウィルスの排出量が多いと判って来た。抗原検査はウィルスの排出量が多い人は引っ掛ける、ちゃんとディテクトするので、PCRと上手く役割分担をして早期発見診断を。
 初期症状の解明。いろんなデータを臨床家の先生は持っているので、もう一回分析して戴き、軽症者をより確実に捕捉された上で、特徴的な前駆症状が有るのか無いのか。初期症状の、単に熱や呼吸器だけでなくいろんなことが有るのかどうか。学会等にお願いしたい。検査対象(WHOでは症例定義)を明確にする。無症状から中等症への症状進行を示す、どんな場合で悪化するのかが早い時期に判るマーカーについても、シッカリ研究をお願いしたいと国や学会にお願いする。
 臨床のデータは個々にあるが、どうやって活用して感染症対策の基礎的なノウハウ・分析、一生懸命やっているがもうちょっと足りない、もっと頑張って欲しい。今日、かなりの時間を割いてこの議論をした。散逸するデータが纏まっていない。感染症研究のキーワードはオールジャパン。関係者、感染研・医療センターを中心に大学や企業などもある。国難なので、みんなが知恵を絞って、オーケストラのように大きな楽譜で。個別でやらずに。今の時期に、構築して欲しいというのがこの考え。
(5)次なる波に備えた「サーベイランス」「感染予防策」等の更なる強化(SL13, P25)
 サーベイランス。病気の情報を集める重要性には異論は無いだろうが。課題はかなり前から申し上げているが、様々な理由で、地域に疫学データはあるが、いろんな障害があって、各都道府県と国との間、なかなか遅い。個人情報や規則の問題で、データはあるが、感染症対策に活用できない。かなり重要な問題。何とかして欲しい。国や都道府県への提言。
 今後の方向性。今まではPCRの検査、鉛筆・FAXでやっていたが、そろそろフォーマットを標準化をしてICTで是非やって欲しい。疫学情報の国と地方自治体の共通のルールが無い。マチマチ。データは一丁目一番地。もっと早く、もっと正確なのが欲しい。今回、痛感したのは、現場の保健所、頑張っている。欧米と比べて課題は、感染症の疫学専門家、データをどう分析するか。日本には臨床家は公衆衛生にも一杯居る。これから大変な時代になって、現象を個人の患者対医師として診るのでは無く、一つのグループとして見るという公衆衛生的な発想を持った人がこれからもっと必要になる。地域の感染症対策を担う人材。FEPT(Field Epidemiology Training Program)の人も、もっと増えないといけない。人材の養成は極めて重要。
(6)感染時の重症化リスクの高い集団等に対する感染予防対策について(SL14, P24)
①院内感染対策について(SL14, P24)
 重症化リスクが高い集団、院内感染や高齢者施設。細かいことを言えば膨大な量だが。大事なことは、院内感染が起きる可能性がある。地域の感染が院内に持ち込まれることは今までもあるし、これからも多分あるだろう。勿論、それを防ぐが、迅速に介入すること。入った時に院長さん等がどう対応するか、うまく素早く対応するか。地域のサポートを得る必要もある。こういうことが出来た病院は早く終息すると判って来た。シッカリした体制構築を作って貰う必要がある。感染者が一人出たらどうするか、を或る程度決めておかないと。そして都道府県、各地域の感染対策は重要。国は大きな方針、実際にやるのは地域。地域で知事に助言出来る人材の確保が重要。病院長・施設長がシッカリとリーダーシップを図れる訓練なども必要。
②高齢者・障害者施設等における施設内感染対策について(P25)
③クラスター感染が生じた場における感染予防対策について(P27)
(7)水際対策の見直しの方向性について(P27・28)

5.緊急事態宣言解除後における市民生活・事業活動の段階的な移行について
(1)市民生活における留意事項(P28)
・「3密」の回避、基本的感染症対策、「新しい生活様式」の実践 等
(2)事業活動における留意事項(P29)
・業種ごとの感染拡大予防ガイドラインの遵守 等

6.都道府県等の対応について
・次なる波に備えた体制整備の為のチェックリスト(P31)
 最後、これからは経済活動を再開しながら感染対策を両立する。もう、すべての事業を止めるというフェーズでは無い。これからはハッキリと感染リスクが高い場所が判って来た。そうした場所の事業者の代表と我々の専門家或いは行政官が行って、どんな対策が出来るか、を一緒に連携して考えていく。ただガイドラインを作ってやって下さい、では無く。そう簡単では無いが、事業者と一緒に現場にあったクラスター感染対策防止をやって下さい、というのが我々の政府への強い提案。

7.おわりに(SL15, P34)
 今回の緊急事態宣言、有り難うございました。何度言っても言い足りない。緊急事態宣言は数日前に解除されたが、今日、既に韓国がどうのと言う前に、日本でも既に一部の地域で見られているように、また少し感染の再燃が起きている可能性がある。潜在化している感染例が突如としてクラスターで現れる。社会経済活動を再開しながら、これからもシッカリ警戒を緩めないことが大事だと思う。
 いまこそ、人材育成や研究など、色々申し上げたが、今、対策の準備期間として、皆さんが作って呉れたこの機会を逃さないで、シッカリ提言したような対策を国に対して迅速にやって戴きたい、というのが我々の提言の最後の結論。

<質疑応答>

● テレビ朝日(幹事社):今の感染拡大は、中国、欧州、国内由来の第3波か第2波の余韻なのか?判断基準は?
押谷:このウイルスは見えにくいは最初から判っている。一旦、見えなくなって、それが突然見えて来ることが繰り返される。こういうことが起きるのは、寧ろ想定内であり、早期に検知して、早期に押さえ込む体制を作るのが大事だと思う。

●東京新聞:市中感染で追跡出来ない場合、保健所のマンパワー、クラスター対策はどこまで効果があるのか?
押谷:「クラスター対策」という言葉が一人歩きしている。我々がクラスターを潰すことだけをしていると誤解されている部分があるがそうでは無い。尾身先生の説明にあったように「遡り調査」で感染源(クラスター)を見つけ、クラスターの周りに更にクラスターが起きないようにする、クラスターが続かないようにする。これは「クラスター潰し」という言葉が適切か、だが「クラスター対策」。日本では諸外国より非常に沢山のクラスターが見付かって来ている。共通する特徴を見付けることが出来た。最初に見付けられたのが「三密」。プラスαで「声を出す、歌を歌う」。必ずしも多くの人が居なくても、1人対不特定多数が接触する環境があれば起こりうる。皆さんに、そういう環境をなるべく避けて下さい、というメッセージを結果的に送ることが出来た。「三密」という言葉が、子供でも良く知っているが、諸外国では殆ど出来ていない。事前にクラスターの発生を防ぐ、日本では効果的に出来る体制が出来ている。
 クラスターが沢山出来てしまうと、一つ一つのクラスターに保健所はキチンと対応して来ているが、全体の我々の解析に来るのに少し遅れると、一つ一つのクラスターを綿密に解析出来ないフェーズもあった。クラスターを見つけることで、クラスターの周りに孤発例が見つかる、弧発例の意味付けが出来たことが大きい。孤発例が沢山できるということは、その裏側にクラスターがきっとある筈だ、という前提に立つと、孤発例が沢山出るということは、それだけ地域で地域内での感染伝播がある可能性がある。そうすると、緊急事態宣言をしたように、より積極的な対策をしなければいけない、そういう証拠を見付けられるということがクラスターを見付けることの意味なので、必ずしも沢山クラスターが出てくると我々のやっていることが破綻するということでは無い。そういう状況になってもクラスターを、出来るだけ発生を抑える。外出自粛や緊急事態宣言などでより注意を喚起すると、クラスターが起きそうな場所の人々が激減をするので。いろんな事を組み合わせて我々がやって来ている。

● 保健所のマンパワーがクラスターに取られ過ぎたて検査に廻らなかったのでは?
尾身:前から申し上げたように、保健所は多くのルーティーンの仕事がある。帰国者の相談センターの窓口、当時感染が一番大変だったのでそれに答えなければいけない。それに加えて検体の輸送、その上にクラスターもやらなければいけない。我々も当初から政府への提言は、帰国者の相談は医師会等が段々やって呉れて来ているから、そうしたことから解放してクラスターだけに集中して下さい、と国に言って少しずつ改善されてきた。

●北海道新聞:「遡り」の調査をしている他の国はあるか?していない理由は何か?
押谷:我々も少し調べた。調べた限りでは台湾のプロトコルには遡りをすると書いてあるが、それほど感染拡大が起きていないので、どこまでやっているかはハッキリしない。欧米のプロトコルを幾つか調べたが、「遡り」をして感染源を見付けるということはプロトコル上、書いて無い。その理由は幾つかあるが、その一つは封じ込めをそもそも目指して行っている。このウイルスは非常に封じ込めをすることは難しい、ほぼ不可能だと我々は最初から説明している。出来るだけ感染者を見つけて、前向きに接触者を徹底的に追い掛けていく。これが封じ込めの基本的な戦略になる。2003年のSARSとか、アフリカで繰り返し起きているエボラの封じ込めの戦略もそういう形になる。それをやるとどうしても見逃すことが起こり得るので、見逃された感染者から感染拡大が起きてしまう。しかも(新型コロナの場合)多くの人は誰にも感染させていないことを考えると、接触者から実は感染者が出ることはそんなに高くないことも判って来た。
 何故、日本で感染源調査が出来たかは、これから精査をしないといけないが、実は日本の保健所は、最初から感染源調査をしている。一旦、中国からの渡航者・接触者で感染が最初の頃は見えていて、一時期見えなくなった。2月13日に全国で感染者が続発したということがあったのを御記憶かと思う。2月13日に感染者が見付かって、14日,15日に和歌山、東京、愛知とかでもうクラスターを見付けている。いろんな要因が考えられるが、日本は結核が各地で起きていて、結核の感染源を見付ける調査を日常的に保健所が行っている。そういうことが、もしかすると要因として考えられるかもしれない。西浦先生が最初の頃に80%近くの人が誰にも感染させていないというデータが出たことも、クラスターを早期に保健所が見付けていたことが非常に大きな要因と考えている。

● 北海道新聞:同じようにやっている台湾が抑えたという事例もあるからか?
押谷:台湾は感染した人が入国して来るのをより効果的に抑えていたので、どのくらい、其処に寄与したかはよく判らない。(尾身先生:SL2で台湾での理由は説明した)

●NHK:地方からの一次情報がなかなか共有されなかったと言う課題。どういう弊害があったのか。改善するに当たって何をボトルネックと見做しているか?
押谷:どう改善するかは感染研の鈴木先生に。我々は与えられた状況化でベストを尽くすしかない。限られた条件下でやっていかなければならないことはいろいろあった。その中で、西浦さんのグループや厚労省・感染研と協議しながらやって来た。統一したフォーマットで自治体が報告なされていなかったことは、大きな障壁にはなったが、一方で、各自治体、保健所が詳細なデータを集積出来ていた。そのことが早期のクラスターの検知、地域でどんなことが起きているかが判った。更に尾身先生が仰ったように、日本は比較的早期の段階から地域内の伝播をキャッチしている。医療レベルが高い、医療へのアクセスが良いということと同時に、保健所、地衛研・自治体が頑張ってデータを集めたことが大きく寄与している。我々が与えられた条件で解析して、対策に活かした。
鈴木@感染研:感染症のデータ、新型コロナのデータが迅速に国のレベルに集約して、迅速に公表まで持って行けないのは、我々もフラストレーションを感じながらやって来た。基本的に、診断した医師がFAXで保健所に届け出る。保健所レベルで1度スクリーニングをして、診断基準を満たしていることを判断してPC端末に入力する。もう一度、都道府県レベルで確認して、厚生省或いは我々の所で最終的にスクリーニングを行う。こうした複数のステップを経て、ようやく国の正式なデータになる。これは精度を保証する、つまり正確性を高くする上では有効だが、迅速性に欠けるということがある。特に今回のように緊急に症例が増えて来て現場はもの凄く忙しくなると、データの入力が追い付かない、都道府県レベルでは確認が追い付かない。迅速に症例数を国の方から公表出来ない状況が発生して来ている。もう一点は、基本的に自治体レベルで情報を集約している。例えば、積極的疫学調査など詳細なデータは各自治体・保健所に集約されてはいるが、それを国に集約するシステムはもともと無い。集めましょうと声掛けをしても、多忙の状況で現場からすべてを集約するのが難しい、現状もまだ充分に改善されていない。新型コロナにはハーシスという新しいシステムが立ち上がることになっているが、運用し始めてみないと判らない。しばらく課題を抱えながら進めて行くことになる。

●NHK:抗体検査、クリニックや企業、団体でやるという動きが拡がっている。提言の中には警鐘を鳴らすニュアンスも読み取ったが、懸念は?
脇田:広く使われているのは研究用の検査試薬が使われている。厚労省に承認されたものはまだ無い状況で、精度はまだ確立されていない。特異度とか感度とか、キチンと発揮している検査なのか。保証された検査を使うことが大前提。

● 西日本新聞:北九州について、クラスター班が派遣されているが、リンクが追えない人が半数を占めるのは何故か?原因は? 宣言後の第2波なのか?
押谷:先ほども言ったように、この感染症は非常に見えにくい。地域の中で見えない伝播。見えなかった感染伝播が続いていた可能性、他から新たにウイルスが入って来た可能性もあるが、恐らく続いていたものが顕在化して来たと思う。多くのリンクが無い人は、たまたま入院する時に調べたら陽性だったと聞いている。何らかの形で地域の中で見え難い伝播があった。これを北九州でも院内感染が起きてしまっているが。こういうものを如何に早期に検知するのか。見えなくなっている感染の連鎖を早期に検知して防いでいくのが今後の課題。

● 西日本新聞:北九州市、本日は26人。先日都道府県を3つに分けたが、北九州は2段階目の感染拡大注意に入っていると言えるのか?
脇田:現在、クラスター班として、感染研からも複数名が入って調査している。北九州市の現状をよく解析する必要がある。直ちに区域分類より、まず現状をシッカリ分析して、必要な対策を自治体に提案することが重要。分類も提案して行くことも必要だと考えている。

● 時事通信:13ページ目に東アジアの死亡者数が少ない。生物学的、免疫学的要因とあるが、文化的、社会的要因は?
尾身:生物学的なことをアジアの所に書いているが、専門家はいろんな情報を、我々の考えも含めてシッカリ説明をするのが役割。なぜ台湾は良いのかは今、説明した、人のボリュームが違う、入国対策が早かった。今日はヨーロッパとの比較が主だったが。我々はトータルのピクチャーを示すのが責任だと思うから、アジアについてもこういうこと、一部の人では、人種。アジア人は少し欧米と遺伝的に違うのではと説明しようとする人も居る。しかし、我々はそれは判って無いと言うことを伝えたかった。それ以上も以下でもない。文化的なことは次の3つ目、市民の衛生の高さ、習慣。文化という意見もあるが、我々はそこまで判らないので、敢えて此処では何も書かなかった。

● 時事通信:東アジアで見ると、日本が少ないと言えないと思うが。
尾身:其処に書いてある通りである。特に台湾が死亡者、(1)の②に書いてある。台湾の低さの主な理由は、2003年のSARSなどの経験で、準備が日本に比べてやや早かったのではないかというのが言えた。脚注で述べているのは、台湾と日本では、1)欧米から来る人のボリュームが違う、2)台湾の方が水際作戦を早めにやったというのが主な理由として考えられる。

● 時事通信:韓国や台湾の場合も同じように考えられるのか?
押谷:韓国は疫学状況が日本とかなり違う。韓国は最初に非常に大きなクラスターが起きた。韓国国民の危機意識が高まっていた。我々が第2波と言っている欧米から入っている感染者を抑えた。その段階では日本はそれほど感染者が多くなかった可能性もある。あらゆる可能性を排除せずに今後も解析する。
尾身:9ページの下から2番目のグラフに韓国のことも書いている。韓国の教会でダーンと、2月25日あたりがメガクラスター。韓国はこれで非常に強い意識を持った。ずっといろんな調査もやって下がって来た。ところが5月6日に緊急事態宣言のようなものを解除したら、段々上がって来た。韓国は日本とは違う。もともとSARSがある上で、最初のクラスターで韓国は強い意識を持った。みんなが頑張ったと5月6日に解除したら、直に感染が拡がった。日本とはちょっと様子が違う。

● 東洋経済:感染者の5人に4人は他の人に感染をさせないと言うが、何処に違いがあるのか?(Skype)
押谷:或る程度判っている部分と、まだまだ判っていない部分がある。感染性が何によって規定されるのか、幾つかデータは出て来ている。一つは年齢に依存するのではないか、高齢になればなる程、感染性が増すのではないか、というデータが出ている。高齢者施設、院内感染が起こり易いことが考えられる。このウイルスは、SARSの場合は下気道、肺の中でウイルスが増殖していた。余り喉とかのサンプルを取っても陽性になることは少なかった。今回もそういう人達も多分居ると思う。肺で主に増殖をして上気道、喉とかでは余りウィルスは出ない。そういう人達は余り感染性を持たない。一方でSARSとは違って肺の中でも増えるし、喉でも増える人が恐らく居るのだろう。高齢者とか重症化する人は、肺炎も起こすし、他の人にもうつすことがある。肺の中のウイルスが外に出るのかも知れない。
 もう一つ大きな特徴は、肺炎はそんなに起こさないが、肺でウイルスが増殖していないか判らないが、余り症状は強く無い、重症の肺炎は起こさないけれども、上気道でウイルスが増えている人が一部居る。例外的と考えているが、自分が症状が無くて気付かない侭に感染を広げてしまう。余り症状が無いので、寧ろ活動も余り制限しないで、病院に居る人では無くて社会の中で活動をしてより多くの人に感染させてしまう。恐らくそういうことがあるのではないかと言うことが、我々の解析で少しずつ判って来ている。

● 日本テレビ:「三密」の要因は?他の要因は?
押谷:「三密」以外に、説明をしたが「声を出す、歌を歌う」のは一つのリスク。諸外国でも裏付けるデータが出て来ている。同時に、1人対不特定多数の人達が密接した接触をする。接待を伴う飲食店も多くの人が居るワケでは無いが、クラスターを生むことになることも見付けて来ている。まだまだ見付けていないような要因も、当然ある可能性がある。今後、我々が予期しない形でクラスターが出てくる可能性がある。今後もクラスターの解析で、接待を伴う飲食店も我々が最初は考えもしなかった形で起きて来た。今後も予期しない者が出てくる可能性がある。クラスターの解析を続けていく。

●TBS:接触アプリの活用は?(Skype)
鈴木:接触者アプリはまもなく導入で話は進んでいるが、いつからかは決まっていない。現場レベル、保健所レベルの負担の軽減に早期導入を期待している。一方で、国民の一定数が加入しないと機能しないことが判っている。どれだけ活用して戴けるか。結果的に保健所レベルの負担軽減になる。市民の協力にも係っていることを認識して戴きたい。
押谷:接触者調査は、非常に時間が掛かって大変な調査。特に、感染して具合が悪い人に聞かないといけない局面もある。全く聞けない場もある。例えば、挿管されて人工呼吸器を使っている人には聞けない。有効なツールになる可能性はある。どこまで普及するのか、どうやって使うのかは今後の課題と思う。

● シームプレス:クラスター調査の前向き調査の比重が小さいのでは?(Skype)
押谷:どこまで何に比重を置くか。接触者の範囲もあって、非常に多くの人に接触する人もいる。どこまで前向きに追っていくべきなのか、どこまでもやると非常にまた保健所は疲弊することになる。一方で、ここで感染者が見つかる可能性はそんなに高くない。余裕があれば前向きにやっても良いが、厳しい状況に沢山の保健所が置かれたので、どこまで前向きの調査に力点を置くべきか。感染者がドンドン増えると接触者が雪だるま式に増えて、実質上出来なくなる。バランスを取らなければならない。或る程度見逃しても、この感染症は多くの人が誰にも感染させていないので、見逃しが仮に起きても、かなりの確率でその感染連鎖は消える。どこまでフォーカスするのか。全部の接触者を確実に追えというと、保健所は疲弊するだけ。そういうことも考えないと行けない。

● シームプレス:濃厚接触者の無症状者の検査を北九州市で行ったら陽性が出て来ているが、そのような検査はどうか?(Skype)
鈴木:濃厚接触者は検査をするしないに拘わらず、14日間の自宅待機をお願いしている。検査が陽性か陰性かに拘わらず、他の方に感染させるリスクは低い。濃厚接触者に対して検査をするかどうかについて、実施要項では症状が出た時に検査をすると書かれているが、自治体の現場ではケースバイケースということで、全員に検査をすることもやっていた。これから先は、濃厚接触者と定義された場合には、現場レベルの判断ではあるが、原則としてはPCRを行っていくと理解している。
押谷:PCR検査に関してははかなりいろんな誤解があると思う。症状がある人でもそこまで感度が高くなくて、全ての感染者を見付けられるワケではない。特に症状が無い人に関して、どの位の感度でPCR検査で感染者が見つかるかは良く判っていない、恐らくそんなに高くない。発症した人は、発症して直ぐにはかなりの感度でPCRは出ることは判っているが、無症状の人はいつ感染したか判らない。恐らく毎日PCRをするとかしない限り、効率良くそうした人を検出することは出来ない筈なので、どこまでやるのか。余裕があって、抗原検査とかが出て来て、幾つかのオプションが拡がるだろうが、今迄の状況で其処までやるのが正しい選択なのかは、充分に検討する必要がある。
(押谷先生は此処で退室)

● バズフィード:22ページの感染予防対策の強化。国を超えた往来。西浦先生が集団免疫20?40になって舵を切った国があったら、その影響をどう防ぐのか?
和田@国際医療センター:水際を担当した。27ページ。他の国でも感染者が落ち着いてきた所もあり、欧米から6月以降フライトの予約も始まっている。現地のデータが信用できるレベルにある国とそうでない国がある。相手国の状況を見ながら、海外との往来についての議論が早急に為されるべきと考えている。この問題には様々なステイクホルダーが居て、外務省的な所や航空機を管轄する省庁もあるし、絶対的な国の方針というものが政治で決まる処もある。感染予防をシッカリとして行く中で、入国者に対してどのように検査をして行くかを考えなければいけない。その他、陰性証明をどうするか、相手国が求めている所もある。一方で国内から旅行に行こうとする方も居るかも知れない。不要不急の海外渡航について、どうお伝えするかを引き続き検討してお伝えしたい。

● 本日、国立国際医療センターの勉強会で、電動ファン、1時間が限界という指摘があった。感染者の手術にどのように対策をするか?
脇田:今の処、そういう観点で専門家会議の中で議論は進んでいない。通常の手術、検査が止まっている段階であり、どう再開していくか、いろいろな医療機関からお問い合わせ戴く。地域の流行状況を良く見ながら、感染者のスクリーニングをしながらやって戴く。電動ファン付きのPPEは1時間が限界と言うが、それ以上の検討は我々はしていないので、今後議論していきたい。

● 読売新聞:脇田氏から話があったが、専門家会議の今後のあり方の議論、現時点で開催頻度や役割、議事概要に留まるがどうお考えか?
脇田:定期的というより、必要に応じてこれからもやって行く。政府、主に厚生労働省に対して必要な科学的な助言。・提言する立場は変わらない。議事録の問題は、少し議論をした。
尾身:基本的には政府が決めること。我々専門家としては、実は前も申し上げたと思うが、2月24日頃から、普通の時なら兎も角、これだけ重要な時に、どんな考えで、どういう根拠で、どういう情報を元に政府に提言したかをシッカリ説明をするのが私どもの責任だと思っている。その為に、十数回会議をやり、提言書をやり、マスコミの方ともこういう質疑応答をして来た。我々は情報共有をシッカリすることを、紙を通して、記者会見でやって来た。

● 議事録だと発言者が誰がどのような発言をしたか、どんな議論がどのような熱量でなされたかも伝わると思うが、箇条書きだと伝わらないと思うがどうか?
脇田:我々は情報を公開するのは、分析や記者会見などを通じて(充分かどうか判らないが)出来るだけのことをやらせて戴いている。会議の議事録・議事概要については、我々がどうして下さいと言うことでは無いので、政府にお決め戴くのが筋であると我々は思っている。

● 朝日新聞:現段階での評価を纏めて戴いたが、水際の強化も提言して来たが、これまでの対策へのもう少し詳しい評価は?
脇田:我々が第1波と言っているのは、中国武漢、湖北省の渡航者からウィルスが入って来たことはゲノム解析でも明らか。第2波と言っているのは、渡航者というよりも日本からヨーロッパ或いはエジプトへ旅行して、知らない間に感染して帰って来た。そういう株が入って来た。3月17日の文書を出しているが、水際対策をするべき。それまでのクラスターで輸入例が判っていたのでお願いをした。その後は、ヨーロッパからの流入で第2波の感染の拡大に繋がったということが評価。

●朝日新聞:4月1日頃がピークというが、その後、緊急事態宣言を出す前に感染者数が減っていく要因はどう分析しているか?
西浦:もう一つの図がある(SL9)。3月25日に東京都知事によって「感染爆発・重大局面」で強い外出自粛を要請して戴いた日で、その後から実効再生産数が1を割った値を取っている。4月1日の頃までにもう感染者数が推定感染時刻がピークを打つということの要因になっていると考えている。実際の処は、研究ベースで背後で何があったか詳細に振り返っている。3月29日には夜の町のクラスターの話もし、3月25日以降、ほぼ毎日のように東京都では何らかの対策を呼び掛けて、東京都の街ではまず百貨店が一部休業となり、夜の歓楽街が少し暗くなってしまって、を段階的に繰り返して4月1日に実行再生産指数が1を下回っていた。其処を少しずつ分解をして、何処までその急所を、新型コロナウィル感染症の伝播で特に重要になるであろう急所の部分を、休業要請することで実行再生産指数がうまく1を割って行ったのか、とうことは、このあと時間をかけて明らかにしようと思っている。現段階では完全に分解出来て判っているワケでは無くて、この3つに分けたようなペースでやっと理解させつつあるという処である。

●共同通信:尾身先生は一部の地域で感染再燃と言うが、解除が適切だったか?
尾身:解除は、ハッキリしているのは、我々は緊急事態宣言を出した時も、感染を全くゼロにすることを目的にしていない。今の処、この病気は今の処、ゼロには出来ない。4月7日に宣言を出した理由は、あの時点で我々が盛んに言っていたのは、「オーバーシュートでは無い、オーバーシュートの始まる前に医療崩壊が来ますよ」と言っていた。4月初旬頃から、東京等を中心に医療の現場が、殊に感染指定病院が危機的な状況に陥っていた。こういうことが最大の理由。オーバーシュートの軌道に入るのをなんとか下げたい理由は2つあって、1つは医療崩壊を避けたい、医療の崩壊寸前だったから。もう1つはクラスター対策が出来ることも目的だった。従って解除の目的は、そうした目的が実際に或る程度、達成出来たから(SL8)。つまり、医療機関にシッカリ余裕が出て来て感染が或る程度、ということが主な、で人口10万あたり0.5というのが目安を作った。感染状況だけでなく、医療の体制や検査の体制を総合的な判断、であの時期で宜しいでしょう。地域の感染は静かに起きている可能性はどこの地域でもある。また、社会経済とのバランスを取ろうというニーズもあった。あの日か、別の日かは議論もあり得るが、経済の問題で死亡者も増えるという中で、宣言中でも宣言を解除した後でも感染があり得るのは当然。解除した後の感染にどう対応するか、これからの暫くの焦点があると思う。いろんな意見、もう少し遅くした方が良いという意見もあるが、大まかにすると政府の提案、あれは諮問委員会、それについて専門家も0.5だけでなく、医療全体が今の処何とか出来るという状態に落ちたので良いのではないでしょうか、これから各都道府県も含めてやって下さいと言うこと。

●日本のクラスター対策がうまく行ったという。「3つの密」は世界的には実施されているのか?
西浦:日本から「3つの密」の代わりに「スリーC」という呼び方で発信している。Closed environment、Crowded space、Close contactの3つのCの頭文字で始まるものが伝播が起こり易い環境だ、と押谷先生を中心に国際発信を強化している。国際機関の会合を含めて話した時に、他の国でも、例えば英国や韓国でも、伝播が起こった場面で同じようなことを考えていたという返答がある。最近でもサイエンス誌に、二次感染が一部の密の環境で起こっているらしい、とても異質性が高い、ということがやっと気付かれていると纏められ始めた処である。

● 東京新聞:議事録の関連だが、公開すると議論をしにくいところはあるか?
脇田:個人情報とかの話があると、其処はなかなか議論は難しい処があるかとは思うが、基本的には感染症の我々が今やらなければ、必要と思われる評価とか分析とか対策について議論をしているので、議論は中身はほぼほぼこういった分析・提言に書いているワケで、議論の中身がこれ(分析・提言書)になっていることは間違いない。

● 東京新聞:岡部先生は全体を公開したら良いということだったが、岡部先生は少数意見だったのか?
脇田:岡部先生はそう言われているし、他の構成員の方もそういう意見がある。必ずしも全員に聞いたワケでは無い。我々の中で、議事録を名前付きで公開することについて会議の中で議論をしたワケでは無いので、一部、勉強会とか、そういった場面でその話をしたことがある、その程度の話です。

● テレビ東京:1)東京都がステップ2で、週明けで殆どの業種で解除になる。再燃につながる恐れはないか? 2)西浦分析で3月25日をピークに下がっているが、それで減少に大きく転じるには充分だったと言うことか?
脇田:まずステップ2。都が今日も20人超えているが、クラスター対策班としても、都の感染者の状況、リンクが追えない方の割合、沢山出る場合は院内感染も結構ある。発生場所は何処か、など詳しく解析している。矢張り市中感染が拡がっているという状況になれば、勿論、こちらからもアラートをする状況になると伝える。
西浦:難しい話だけ残っているが、3月25日から実効再生産数が下がっているが、1を超えている状態。15ページに実効再生産数はどう解釈されるべきかのメカニズムを書いているが、感受性人口がどれだけ%として残っているかと、接触率との掛け算に比例している。今の日本の人口ではほぼ100%の人が感受性を持っているので、実効再生産数が何を反映しているのかと言うと、感染に至るような接触率が時刻と共にどう変わったかを直接反映している指標。25日の頃の行動変容で充分かという質問に対しては、1を超えている状態なので充分では無いと思うが、一方で、幾つかの対策が重なって、特に夜間の繁華街を含めた休業要請が或る時から出されるワケで、そこから1を下回って行っているので、そういったものが今後充分であるのか、データを詳細に分析して明らかにして行きたいと思っている。まだそういったものだけで伝播の大筋の部分を捉えられるか、東京のその当時がどうであったのか、他の都道府県にもそれが適応できるか、ということを幾つか実証しながら分解をしていかないといけないので、まだこれからの大きな課題である。

● 時事通信:専門家会議の議事録。過去の提言で、公開を提言していたのではないか?
脇田:我々の間ではあったかも知れないが、スミマセン。

● 時事通信:岡部先生もだが、少なくない委員も思っておられるようだが、政府が決めていると明言しないと、専門家会議が批判の矢面に立たされるということはないか?
脇田:一番大事なのは、我々がどう議論をして、どのように考えていて、どのように政府に提言をしているかをお伝えすること。議論のプロセスも重要かも知れないが、結果として集約したものは提言に出ている。岡部先生も記者会見でもお答え戴くこともある。夫々の構成員がそれなりに意見をお伝えしている。その上で議事録が公開していない為に専門家会議が批判されているのかどうか判らないが、専門家会議の議事録の公開に関しては、我々が決めているのではなく、政府が決めていること。全員に確認して聞いているワケではないので、それ以上のことは無い。

● 議事録に関連してだが、最初から議事録を作るかどうかの質問があったか? 個人としてはどうお考えか?
脇田:最初にどうだったか、厚労省でも判らない。個人の考えは、どちらでもいい。先ほどから言っているように、我々の議論・考えはこの書面、記者会見で充分で話をしている。議事録はどちらでも良いという立場。
尾身:ご質問があるので、基本的に政府が決めることだから。私の理解は、これを反対すると言うことを言った人は居ない。個人的には問題無いと思う。申し上げたいのは、それは議事録。実は、専門家としてどういう考えでやって来たか、何度も申し上げているが、大事なことをシッカリ議論をして議事録、今日は1時間半だが。このかなりの分量のペーパーを説明し、これをどう考えているか、極めて重要。我々は議事録はどうかは国の、と思っている。我々はこれ(分析・提言書)が生命だと思っているので、これに向けてかなり議論を、当然我々それが役割だし、説明するのが我々の仕事。議事録は政府が決めて、名前を出すなら私は問題ない。我々自身がどうこうの話ではない。我々は政府の中の組織であり、我々の仕事はそっちよりもこれでどういう提言を政府にして、やるということが1丁目1番地だから。ま、敢えて聞かれるから。

● こういうことを沢山聞かれるのは不正常だと政府に伝えることは無いのか?
脇田:我々が政府に伝えるのは、議事録を公開するかしないかということよりも、感染症対策として何が必要かをお伝えすること。現状を分析して、その結果、現状はこういうことですから対策はこういうことをお伝えするのであって、議事録を公開して下さい、しないようにして下さいと言うことを伝える立場では無いと考えている。
庄林(厚労省):1回目の専門家会議で内閣官房の方から議事録では無く、議事概要を作成して公表をすると言うことは説明はしている。

●日本経済新聞:宣言前の行動変容が起きていたとした?
西浦:15ページ(SL9)の「尚、東京のデータ分析では」の箇所。緊急事態宣言下で実行再生産数がこのように下がっていると確認できているのは東京と大阪。それに関連する詳細な推定値は同ページの脚注にあるので確認戴ける。スライドとの対応に関する返事。
3つのフェースに分けていてこれほど不連続なのは不自然だというのは仰る通りだと思っている。統計の領域では実効再生産数のモデル化は階段関数、ステップファンクションと呼ぶ。流行の期間が3つの主要なフェーズに分けられる。その宣言2つの所で大きく世の中が変わったと想定した時の推定結果。より詳細に、例えば毎日何かが起こったということで分解できるかどうかというと、必ずしもそうでは無い。実際に起こったイベントと観察現象から得られる情報の細やかさと対比しながら決めて行く処だが、先ほど話したように例えば特定業種の休業要請がどれだけ効いたか、等は後付けでこれからやらなければいけない私達が背負っている重要な研究テーマ。ピアレビューを経た学術論文として公表して、研究成果として出したいと思っているが、夫々の急所を叩くことで何処が上手く出来たのか、のはもう少し詳細に分解した結果として提示したいと思っている。今後の課題。
脇田:過去の提言で議事録について何かあったか、という質問があったが、過去の提言では議事録について何も触れていない。議事録を出すなとも言っていないことになる。

●テレビ朝日:次の流行に備えた対策。軽症者、無症状者が多いが、発症前の対策は?
和田:発症2日前に遡って、他人に感染させる可能性があると判って来ている。出来るだけ早い段階での把握する必要があることは間違い無い。出来るだけ発症してから早いタイミングという意図も込めて、症状から4日待機ではなく、早い段階から受診して下さい、という流れになって来ていると承知している。一方、PCR検査も必ずしも普段の臨床現場でこれまで使われて来た検査では無い。PCR検査に取って代わる感度があるかどうかはまだ判っていないが、迅速診断キットが普及してより早期の段階で診断がついて感染の制御にも貢献する可能性があるのではと期待している。

●テレビ朝日:諮問会議の小林氏が、検査の拡大と隔離が効果が高いと言っているが?
脇田:国民全体をスクリーニングするという考え方か?無症状者をPCR検査で効率よく見付けられるかというと、必ずしも現状はそうでは無い。武漢で600万人のPCR検査をして300人の無症状者を見つけたと。ただ検査は非常に多くの医療資源を投入されて行われている。更に、PCR検査の感度に関しても、必ずしも全員を見付けられるということでは無い。特に無症状者の方、いつからどのような状況で見付けられるか、も良く判っていない。陰性となっても翌日から陽性になるかも知れない、ということも含めて、必ずしも有効な手段になるとは個人的には考えていない。

● 北九州市の状況、具体的にどういう状況になったら宣言を出すのか?
尾身:宣言が全国で解除された。今迄の感染が、福岡、東京で増えて来た。ここで宣言をもう一度出すという話は、4月7日の時には初めてであそこまで感染が行って医療崩壊寸前まで行った、東京都は文字通りそうだった。なんとか下げるということで、ロックダウンじゃ無いけども、かなり強力な要請を国も、事業者や国民に対して行って此処まで来た。これはかなりのいろんな大変な思いをして来た。出来ればああいう状況を、日本の全員と言ってもいいが、多くの人はもう一度繰り返したくは無い。一応は書くことは出来る。どうなったら、もう一度声明を出すとか。我々の中でも議論はした、数まで。いろんな理由で。数は一つ。大事なのは医療体制。抗原検査とPCRの役割、新たななるべく早く診断を出来る研究、治療薬も良いのが出てくるとなると、市民が感じる不安、安全の感覚が変わる。今から数を出すことは簡単だが、もう暫く待って、我々は頭の体操はした。今やると違うメッセージになる。抗原検査や臨床治験の結果も出て来るので、今の、4月7日と違う景色になる。予期出来たことで今、大事なのは、早く見えない感染。どういうことか暫く経つと判る。県や北九州市が、リスクが高い所で感染が起きている可能性もある。其処についての判断は自治体が責任を持ってやって貰う必要がある。数日、一週間くらいが大事で、今、再指定をするかどうかという段階では無い。専門家としては常にそういうことについては前もって考えておくことが我々の仕事なので、そういう頭のエクササイズは毎日やっている。仮に、どんどん状況が、誰も望んでいない、だけど最悪のことも想定するのがリスク管理だから、そういうことが起きそうとなれば当然、或る程度こうなったら、ということは考える。

● NC:岡部先生は議事録がある方が有り難いと言ったが、専門家会議としては議事録は公開しないという結論に改めて至ったのか?
尾身:我々は基本的には、何度も申し上げるが、議事録は国の決めること、ハッキリ言って。皆さんがご関心があることも我々は耳があるので知っている。今日の専門家会議で或る委員が、皆さんの関心を知っているので、「国の方としてもちゃんと検討して下さい」と言った。我々、そこで挙手で決を採ったワケでは無いが、其れについて一人ひとりチェックはしていないが、我々は政府に、「そういうことについてシッカリとしたスタンスを検討して下さい」という発言があった。

● ドイツと日本の比較グラフ。尾身先生は「ドイツは急な立ち上がり、日本はダラダラと立ち上がり」と言ったが、母数が異なるので累積感染者数の比較をしても立ち上がりの評価はきないのでは?
尾身:日本とドイツの数は違う(SL4)。皆さんも覚えておられると思うが、最初にガッと上がると、医療システムなどは圧倒される。NYもその典型。日本はかなり早い時期に探して呉れた。累積患者とか、勿論、数が多ければ感染者数は、それは南太平洋の島国と中国とは比較できない、絶対数として。国の違いがこれだけあるにも拘らず、日本は初期の段階で見付けたと言うこと。累積患者数は勿論違うが、カーブがなだらかなのは明らか。ジワジワ来た。日本の課題は沢山あるが、今回は緊急事態宣言で実際の死亡者が少ない理由、国内外で日本は良く判らん、説明が付かないということがあるので、我々サイエンスコミュニティとして有るデータで説明をする。課題についてもトータルな絵を、有るデータを基に分析して国内外に示すのが我々の仕事。立ち上げが急な、英国、武漢も。日本もそれに近いことがあったが、外国に比べれば辛くも医療崩壊を避けた。これが一遍に来たら、日本の医療関係者があれだけ献身的な努力をしたが、他の国のようになった可能性は否定できないと思うが、幸い日本は現場の人達の努力でこういうことが判って、クラスターの何処が危ないか判って、それも注意喚起が出来て、グッと上がることを抑えられたのは、今日の段階での評価はそういうことが言えるのではと。その判断をを社会に説明をするのが我々の責務。

●医薬経済:議事録について。記者会見で説明をすればいいと言うことではない。行政が対応を決めるというのは科学者として責任逃れのようにも思う。科学者として不要と考えるのか?
脇田:何度もご質問戴いており、特別に答える必要も無いと思うが、科学者としての責務は、我々が専門家会議でどういう議論をして評価をして政府に提言をしているか、を皆さんにお示しすることが一番大事。この状況分析・提言或いは記者会見でお示ししている。それで不充分というのは真摯に受け止めたいが、それ以上のことでは無いと思う。