4年間、ありがとうございました(退任のご挨拶)

 

 

2003年3月31日

骨髄移植推進財団事務局長 埴岡 健一

 

 

春色のなごやかな季節、ますます御健勝のこととお慶び申し上げます。皆様には、平素から格別のご厚誼にあずかり、厚く御礼申し上げます。

 私儀、3月末をもって当財団の事務局長を退任いたしますので、ご挨拶を申し上げます。本来ですとお会いして御礼を申し上げなければならないところ、略儀にて失礼いたします。

 

振り返ればこの4年間、私の在任中においても皆様のご協力とご参画によって、骨髄バンク事業は大きな発展をしてまいりました(すべての移植希望者に機会を提供するという理想からすれば、まだ道半ばということも、また、事実ではあります)。

当財団が取り組んだこと、皆様にご協力をいただいたこと、骨髄バンクをとりまく環境の変化、等を数え上げれば切りがありませんが、大きく捉えれば、3つの柱に集約されるのではないかと思います。それは、@コーディネート業務の改革と移植件数の増大A骨髄ドナー登録チャネル(経路)の改革B財政の改革――です(5ページのまとめ「3つの改革、3つの改善」をご参照ください)。

 

1つ目の業務改革については、いわゆる「迅速化」プロジェクトを推進して参りました。移植を希望しながら、間に合わずに(その機会が得られずに)亡くなられている患者さんが多数存在するという事実を直視し、そうした事態を減らすべく、採取・移植までの期間を短縮しようというものでした。

おかげさまで、景気対策の政府補正予算をいただき、プロジェクトを開始することができました。いわゆるBPR(業務の抜本的改革)の手法を取り入れ、コーディネートの行程を徹底的に分析し、「あるべき姿」と「それを阻害している要因」を抽出し、「阻害している要因を取り除く」にはどうすればよいか、職員たちは時間外の仕事を含めた膨大な時間と労力をかけて考えました。こうして、全体の行程を再設計したうえで、それをできるだけコンピューターで支援して実行するシステムを構築することができたのです(20011月、「コーディネート支援システム」稼動)。

また、平行して、現場での創意工夫を深め、いわゆる「ピンポイント調整」(患者さんの移植希望日をドナーの方に予め伝えての日程調整)を進めていきました。最終同意確認の日に、同日に採取前健康診断を実施する場合もあります。さらに、一定のルールにのっとり、採取前健康診断の日に自己血採血を行うことも可能となっています。

こうした業務改革の結果、移植を希望して患者登録をしてから移植実施日までの日数(中央値)は、1988年当時の平均250日程度から現在では150日程度となっています。100日〜150日の間に実現する事例も増えており、従来ならば「移植が間に合わなかった」方でチャンスが得られた方が年間50100人程度生じ、件数の増加要因にもなっていると考えられます。

今後は、このほど導入されることになった「専任コーディネーター」制度の実施を始めとしたコーディネート体制の強化と、さらなる行程プロセス改革によって、欧米並みに60日〜100日程度で仲介が完了できる仕組みを作っていくことが課題となってきます。そのため、すでに確認検査を実施したことがあるドナーの過去の検査結果を利用した迅速なドナー選定、さらには、ドナーコーディネート行程のさらなる同時平行化などが検討されることになるでしょう。

 

2つ目の登録チャネル改革については、「ドナー登録会」ルートの拡大が一貫して推進されました。「登録したかったけど、なかなか機会がなかった」という声が多かったため、身近なところで登録ができる機会を提供することで登録者を増やし、「目標30万人の早期達成実現」を目指すものでした。まず、「集団登録会」(骨髄ドナー登録だけが行われる)の推進が模索され、一定の成果と起爆剤の効果をもたらしました。しかし、全国のボランティアや財団職員がひとつひとつ手作りで、協力者の理解をとりつけ登録会を開催していくことは多大な労力を要しました。そこで、沖縄県で多数実施されていた献血バスなどを含めた献血会場(移動献血会場)でのドナー登録が注目され、ライオンズクラブからの要請、日本赤十字社のご協力、行政のご理解があいまって、全国的に「献血併行骨髄ドナー登録会」が浸透していくこととなりました。現在では、登録会が年間1000回(うち献血併行800回)開催されるようになり、登録会ルートによる増加が全体の半分を上回るようになりました。登録会経由でドナープールに入られた方が、すでに合計3万人を超えています。説明員をしてくださるボランティアをはじめ、多くの方々のご協力なしでは成し遂げられなかったことです。あらためて敬意と感謝を表する次第です。

従来の窓口(固定窓口)からの登録者が維持(2万人程度)され、「移動窓口」が順調に伸びて2万人程度となることで、合計4万人の年間登録者となることが目標とされましたが、「献血併行登録会」への取り組みに地域格差があること、固定窓口での人数が落ち込んだということから、目標のような伸びは達成できませんでした。日本全国が献血併行の先進的地域と同様になれば、30万人が2年ほどで達成できると推定され、格差解消が喫緊の課題であるといえます。

さいわい平成15年度は政府のドナー登録受付検査に関する国庫補助金が35000人分に拡大されました。政府の審議会においては、ドナー登録に関する地方行政や日本赤十字社の役割を明確化することで目標達成をより確実にしていくという方向の議論がなされています。ドナー登録30万人の早期達成には、こうした体制が整備されることに加えて、今後とも皆さんのご協力が欠かせませんので、倍旧のご支援をお願いするものです。

 

最後の財政再建について。骨髄移植推進財団は「頑張れば頑張るほど赤字になる」構造にありました。ここ数年で業務量が2倍になっているにもかかわらず、補助金や寄附金がそれに比例して伸びないため、どうしても収入が不足する傾向があったのです。1997年から2001年度までの赤字合計は1億9000万円に上りました。2002年初頭には基本財産から2億円を取り崩す事態に至りました。経費の削減に平行して、骨髄液への健康保険適用と政府補助金の大幅増額を要望しましたが実現せず、2002年4月1日より、患者負担金の増額を実施せざるを得ませんでした。一方で、保険適用が検査代の一部(患者とドナー1人分+15万円)になされ、値上げ分のうち一定の吸収がなされました。2002年度、財団は6年ぶりの黒字転換(2002年度補正予算ベースで6700万円。「患者負担金等支援基金」除く)を果たし、一定の財政再建は果たしましたが、患者負担金問題は解決していません。当財団は患者負担金の解消のため保険適用を要望してきておりますが、今後とも患者負担金の解消あるいは大幅軽減について、継続して検討と模索がなされ、進展があることが期待されます。

患者負担が増大していること、財団の運営費用が不足していることを知った皆様に憂慮をいただき、暖かいご支援をたくさんいただきました。ご寄附の件数がこの経済情勢のなかで増える傾向にあります。また、創設された「患者負担金等支援基金」については日本経済団体連合会をはじめとして、財界、社会貢献団体などからたくさんのご賛同をいただいております。この場を借りて皆様のご篤志に厚く御礼申し上げます。

 

上記3つの改革については、一時期だけでなく継続的な取り組みが求められるものです。おりしも政府審議会「造血幹細胞移植委員会」では、骨髄バンクを含む造血細胞バンクの再構築・体制強化が議論されています。また、当財団では、今後の発展イメージを形成するため『中期展望』を策定いたしました。「ミニ移植」の浸透などにより、数年後には骨髄移植の件数が倍増すると予測され、骨髄バンクの役割と期待されるものは、ますます高まっていくものと思われます。骨髄バンクの理念と使命の追求・達成のため、今後とも、皆様のご協力をいただけますよう、私よりもお願い申し上げます。

 

4年間、皆様から暖かいご声援とご指導をいただきましたことに、心より御礼を申し上げます。至らぬ点も多々あったことと思います。この場を借りて、お詫びを申し上げます。

私の進路はまだ決まっておりませんが、今後とも何らかの形で社会に貢献できることを考えていく所存ですので、変わらぬご指導・ご鞭撻を下さいますようお願いいたします。最後になりましたが、皆様の益々のご健勝をお祈りして、退任のご挨拶とさせていただきます。

 

 

今後の連絡先    埴岡 健一

自宅ファクス   0424-98-5910

電子メールIZN01203@nifty.com





骨髄移植推進財団の発展と成長
年度 1988 2002
年度(平成) 10 14
移植数(件) 483 739
コーディネート数(件) 2,456 4,500
移植に要する期間(日) 240 150
年度末ドナー登録者数 114,363 168,413
新規ドナー登録(人)** 23,700 22,500
うち登録会窓口登録(人) 132 11,500
登録会開催数(年、回) 1,000
政府補助金額(万円)* 13,000 43,000
寄附金額(万円) 17,448 20,342
年間予算(支出)(万円) 92,726 114,321
収支(万円) -3,618 9,594
職員数(人) 49 65
*政府補助金額14年度の項は、平成15年度予算
**平成15年度新規ドナー登録予定数は35000人