「文字から映像・音声の世界へ」(05/7/4:日臨内ITコーナー)
筆者は平成10年にインターネットを始めましたが、医療系メーリングリスト(ML)を通じて全国各地の先生方と、そして他の職種の方々とも知り合うことができ、そのご縁で平成13年8月、鹿児島は甑島の手打診療所へ伺った際、講演された熊本教授の「インターネットは縁(えにし)だ」という言葉に納得しました。普段は文字だけのやり取りをMLで行っているお仲間同士が、オフミ(off line meeting)で実際に出会った時、初対面なのに旧知の間柄、という不思議な感覚を味わうと同時に、やはり、筆談するより会談する方が何倍もお互いの思いが伝わるなァ、と実感しましたが、今回はMLのお仲間との試みを御紹介します。

●映像会議の導入:
平成14年9月、或る医療系MLで、ORCA(On-line ReceiptComputer Advantage)についての講演会を共有できないか、という話になりました。当初、某社が持っているテレビ会議システムを借りる予定でしたが、1回利用料が40万円と高額で時間的にも制限があるとのことで諦めかけたところへ、簡便な映像会議サービスがある、との情報が入りました。このサービスは当時広まりつつあったブロードバンド回線(高速度で大容量のデータ転送可能な回線)を使用するもので、1)参加費が月300円、2)自前のパソコンに5000円前後のカメラ・マイクセットを追加するだけ(図1)ととても簡便で、試してみると映像・音声も実用に耐えると判りました。早速、都内8地区医師会館及び全国各地22箇所を繋ぎ、講師が自宅から参加する講演会と、6つの医師会館から夫々ベンダー6社が行うORCAのデモを共有し、双方向性の質疑応答も行いました。

その後も頻回に映像会議を開催(1)、その経験を踏まえ、翌年度には東京都医師会医療情報検討委員会でもこのサービスを採用、毎月1回平日午後開催の委員会には、4名が都医会館、4名が夫々の医療機関から参加、2年間で17回、映像委員会が開催されています。

平成16年4月、料金体系見直しにより初期導入費用が高めに設定された為、この映像会議サービス(2)から毎月1000円のみという映像チャット(3)に切り替え、今でもほぼ定期的に全国各地の先生方とテーマを決めて映像委員会を行っています。尚、日本臨床内科医会IT委員会でも他社の無料映像チャットを試みたことがありますが、映像も音声も実用には耐えるもののシステム自体が突然落ちてしまうなど不安定で、委員会で使うにはやや問題があると判断しました。

●実際の運用:
映像チャットは参加者全員が月額1000円でID・パスワードを取得してあれば簡単に利用できます。a)まず事前に一緒に協議したい方々に映像委員会の開始日時及び開設するチャット・ルームの名前・パスワードをメールで通知し、b)委員会当日はパソコンにカメラ・マイクセットを繋げ、ID・パスワードを用いて当該ホームページ(HP)から映像チャットのページへログイン、c)既に通知した名前・パスワードの新しいチャット・ルームを開設して他の参加者が入室して来るのを待つだけです。勿論、他の方々の入室も非常に簡単で、i)当該HPから映像チャットのページへ自分のID・パスワードでログインし、ii)事前に通知されたチャット・ルームへ入室するだけです。

入室された方から順に音量調整を行い、全員が揃ったら即、映像会議のスタートです。同時に発言できるのは2名までなので、通常の会議同様、司会役を決めて協議すると良いようです。発言の際にシフト・キーを押す以外、キーボードに触れる必要はありません。ただ、文字チャット機能が付いているので、そちらで筆談も、また書記役による議事録要旨の同時作成も可能です。全員がインターネットに繋がったパソコンを用いていますので、様々なサイトを手分けして検索、全員で共有しながら協議を深める、といったことも容易です。

ただ、従来の会議へ外からオンライン(映像チャット)で参加する場合、前者での全ての発言がキチンと後者に聴こえるような配慮が必要です。その他、回線や使用パソコンのトラブル、商用サービスが故の不確かさ、など欠点も多々ありますが、多忙な者同士、遠方から一箇所に集まる為の時間・費用・労力などを考えると、いつでもどこでも簡単に映像(音声)会議を可能とする映像チャットはとても有用なツールです。

映像委員会では日常的にMLでやり取りを行い、それらの要点及び挙がって来た資料を専用HPに纏め、当日はこのHPを夫々のパソコンで供覧しながら文字だけでは詰め切れなかった部分を協議しますので、まず配布資料の説明から始まる従来の会議に比べ、遥かに効率的で充実したものとなります。一方、こうした取り組みの中で「やはり隔靴掻痒、オフミじゃなければ」という御意見も出ましたが、試しに同じメンバーでオフミも開催してみた結果、この簡便なツールをどう捉え、どう使うか、という姿勢の問題であると感じました。

●ビデオ配信:
上記のサービスには128箇所へ講演会を映像中継できるものもあり、中継しながらビデオ録画することも可能です。こうしたビデオを順次、HPから無料提供するサービス、例えば内閣府担当官による「個人情報保護法案の解説」(4)や国立がんセンターでの専門医による「食道がん再発の治療とその問題点」」など(5)も始まっています。一方、例えば日本医師会HPにある「インターネット生涯教育講座」(6)では「画像診断、最近の進歩」や「不整脈の治療と管理」など、医学教育ビデオを提供するHPも増えています。

これらはいずれもビデオ録画ですので、生の講演会と異なり中断しても好きな時に視聴を再開したり、大事な箇所は繰り返して視聴することもできます。加えて従来のビデオ・カセットやCDとは異なり、視聴したい講演会を事前にビデオ録画して自分で持って歩く必要も無く、インターネットに繋がったパソコンさえあれば、いつでも好きな時に好きな場所から簡単に新しい知識・情報を仕入れることができるのです。

医療の現場は人類と病気の過酷な戦場であり、多くの患者さんを抱えて医療関係者は非常に多忙です。インターネットが普及した今、医師会や医会が、というより国策として、簡便な映像チャットや医療ビデオを医療関係者に幅広く提供することが、より多くの勝利に、そして戦費の節約にも繋がるのではないでしょうか。

参考:
1)広域講習会:
http://www.cminc.ne.jp/orcademo/broba0301.html
2)映像コミュニケーションサービス:
http://www2.packages.jp/65578/all/index.html
3)BROBAスペシャルパック:
http://bb.goo.ne.jp/special/broba_sp/
4)Medical Bank:
http://www.medical-bank.org/
5)メディカルカンファレンス:
http://www.ncc.go.jp/jp/ncc-cis/pro/vod/index.html
6)インターネット生涯教育講座:
http://www.med.or.jp/japanese/members/edu/kouza/index.html