市民公開講座 2011.4.9
 
○市民公開講座:「放射線被ばくの今とこれから」
  1. 日時 : 平成23年4月9日(土)午後2時から午後4時まで
  2. 場所 : 東京国際フォーラム ホールC
        東京都千代田区丸の内3丁目5番1号 03-5221-9000
  3. 主催 : 神田医師会浅草医師会港区医師会文京区医師会日本橋医師会中央区医師会
  4. 演題:「緊急被ばく医療の基礎知識-福島原発事故と今後の課題」スライド音声) 
  5. 演者:国際医療福祉大学教授 鈴木元先生 (研究分野:放射線リスク、危機管理、免疫寛容)
  6. 司会:自衛隊中央病院内科 箱崎幸也先生
  7. 挨拶:
    1. 総合司会:椿哲朗@浅草医師会前会長(前中央ブロック幹事区)
    2. 開会:大塩力@神田医師会会長(中央ブロック幹事区)
    3. 閉会:市川尚一@中央区医師会会長

○市民公開講座からの報告:
  • 講演「緊急被ばく医療の基礎知識-福島原発事故と今後の課題」スライド音声
  • 市民公開講座の後に寄せられた質問と回答
  • スライドショー:「DMAT、JMAT、そして中央ブロックJMAT」
  • 一般出席者 492名
  • 主催医師会参加者:役員49名、看護師1名、事務局12名

○経過概要:
  •  3月11日に発生した東日本大震災は、未曾有の大津波、そして福島原発事故を引き起こし、ことに後者は今後の見通しさえ立たない厳しい状況に陥っています。私たち都心の中央ブロック9医師会は、天災を乗り越えた被災地の方々が、これ以上、風評被害という人災に苦しめられることが無いように少しでもお役に立てれば、と急遽、会長同士が協議、中央ブロック現幹事区医師会の大塩会長のもと、協力可能な6医師会でこの市民公開講座を開催するに至りました。
     大震災発生後、直ちに救命活動を開始したDMATを引き継ぐべく、日本医師会も3月15日にJMATを始動、全国各地から病院勤務医を主体とした「医師1名・看護師2名・事務1名」の支援チームが続々と被災地の医療支援に赴きました。
     一方、地元の医療現場を支える各地域医師会は、大震災直後の帰宅困難者への対応、工場損傷で欠品となった重要な医薬品等の確保、唐突な大規模計画停電に対し生命維持機器等の電源確保等へ、迅速な対応を図り、実働しました。
     また、これと平行して、日常診療を疎かにせず、より有効な被災地支援を行う為、3月20日に都内中央ブロック幹事区医師会の椿哲朗会長が福島県いわき市医師会の木田会長及び日医災害救急担当の石井理事と電話で協議、速やかに医療支援の為のネットワークを構築、同24日、中央ブロック9医師会で都内23区の2倍相当をカバーするいわき市医師会を支援、を決定しました。
     その翌日、中央ブロック9医師会では会員に協力を要請、いわき市医師会と密接に連携しつつ支援チームを募り、4月1日から避難所の巡回医療支援を開始、今後も中長期的支援を継続し得る体制を堅持します。
     加えて、先月末の会員からの提案を踏まえ、この活動の一環として、原発風評被害に苦慮するいわき市等、原発近隣地域の支援も行うべく、準備不足の御批判は覚悟の上で、この市民公開講座開催を企画しました。
     この非常時、マスコミ各位におかれましても、都心各地域の、そしてこの都民、国民の生命を守るべく、日々、努力している私たち医師会員の思いをお汲み取り戴き、「がんばろう日本」へ向けて共に御尽力戴ければ幸いです。


市民公開講座当日の様子
開始前の各医師会打ち合わせ 入場の様子 退場の様子
 
会場左側 会場正面 会場右側 

 
中央区医師会へ寄せられた質問へ、東京という環境下での対応ということでの鈴木先生からの回答。
  • 質問1:女性(2児の母)
    • 原発事故発生から今日までの間で一番放射線量が多かった時の状態でお教え下さい。 幼児〜小学生に外で元気に遊びましょうと云っても良いでしょうか。 大人への「無用な外出は避けるように」とありますが、新学期が始まりました。毎日登園、登校、放課後の遊びに対してどのような状態になったら家の中で遊びましょうと云わなくてはならなくなるのかご教示いただきたく思います。
  • 回答1:
    • 東京の放射線レベルは、事故後も心配するようなレベルに上昇したことはありません。外で元気に遊んできなさいで問題ないです。
      今後、原発が爆発的に放射性物質を空中に放出する事態はないと思いますが、そのような事態になった場合は、政府が国民に対して屋内待避して情報を待つよう伝えると思います。その場合には、お子さんを家の中で遊ばせるようにして下さい。
        
  • 質問2:.女性(渋谷区在住)
    • 1週間経って状況が変わってしまっているので、若干質問を変えさせて頂きます。
      今日現在、年間放射線積算量が20ミリシーベルトを超えると予測される地域について避難指示(計画的避難区域等含む)がでていますが、先日の講座の中では「1回数ミリシーベルト未満の被曝を繰り返し、合計100ミリシーベルトを超しても発癌リスクは検出不能なレベル」というお話しだったかと思うのですが、政府が新しく設定した20ミリシーベルトというのは充分に余裕をもった値ということで宜しいのでしょうか?子供に関しては、10ミリシーベルトというニュースも聞きます。そうなるとかなりの広範囲になるのではないでしょうか。原発の状態も一向に良くなる気配もなく、今、1日の放射線量が2マイクロシーベルト前後位でも、この状態が5年、10年と続く場合は、どの位の放射線量だと危険なのか知りたいのです。政府は保障の限界があるので、多少危険になる地域でも、避難対象にしないのではないか、といった話も聞こえてきます。そうなると、もう何処が安全で、何処が本当に危険なのか、という事実が全く県民・国民にはわからないということになってしまいます。
      また、現在、父親が初期の癌を患っております。そういった場合は、健康な人よりも影響を受けやすいのでしょうか?
  • 回答2:
    • 年間放射線積算量が20ミリシーベルトをこすと健康影響のリスクが発生するかというと、そんなことはありません。国際機関でも国際原子力機関IAEAは、避難の基準として年間100ミリシーベルトを推奨していますし、国際放射線防護委員会ICRPは20〜100ミリシーベルトの幅を持って推奨しています。講演会で紹介したインドのケララ地方は年蓄積線量の平均が4ミリシーベルト(最大70ミリシーベルト)ですが、30万人オーダーの疫学調査でも、被ばく線量の増加に応じた癌リスクの増加は認められておりません。年間20ミリシーベルトという値は、十分余裕をもった値です。
      土の運動場や砂場は、舗装した場所に較べて、放射性物質が洗い流されにくいので、相対的に放射線レベルが高くなります。私の大学の例では、2倍以上高くなります。今回、子供の屋外活動を制限した場所は、そのままの放射線レベルが変わらなければ8時間外にいると年間10ミリシーベルトになるということで決められたようです。放射性物質の減衰や洗い流し、地面への浸透などで放射線レベルはどんどん低下していきますから、やがてこの規制も解除されるかと思います。
      原発からの
      空中への放射性物質放出はほぼ収まっており、あとは、環境中の放射線レベルが低下するだけです。田植えや畑起こしが始まると、放射性物質の地中への浸透が早まり、放射線レベルが大幅に低下すると思います。また、日本は雨の多い気候ですので、放射性物質の洗い流し、土中への浸透も早いです。将来を過度に心配する必要はありません。
      放射線の健康影響は、年齢が低いほど出やすく、年齢を重ねるに従い、低下します。癌を患っているかどうかは、関係ありません。
         
  • 質問3:女性(世田谷区在住)
    • 血液学的検査で被爆の状態を知ることができますならば、好中球のほかに後項目などございますでしょうか。
  • 回答3:
    • 500mSv以上の急性被ばく(瞬間的な被ばく)でなければ、血液で被ばくの状態を知ることは難しいです。今回の事故で、東京在住の方に臨床検査で変化の起きるような被ばくはありませんので、ご安心下さい。
        
  • 質問4:
    • 質問2は多くの国民の疑問、であり、先生の御回答2は判り易く、「年間20ミリシーベルトという値は、十分余裕をもった値」、「やがてこの規制も解除される」とは思うのですが、
      危ういなりにも原発事故が現状を維持、急性障害ではなく発癌影響に対しての避難、であれば、まず避難先(できれば住宅)をキチンと確保した上で、小児・妊婦(及び青少年)を対象とする避難から、とすべきで、中年以上はその後、半年くらい掛けて様子を見ながらで充分、寧ろお年寄りなどは無理な避難で体調を崩し、却って生命予後を悪化させるのでは、と強く懸念するのですが、如何でしょうか。
  • 回答4:
    • 私もその通りだと思います。元々20mSvがぎりぎりの安全上限ではなく、相当程度、余裕を持った基準だということが、政策決定者および国民に理解されていないように思います。20mSvを超すような地域での作業は一切禁止するといった風潮(本日の夕刊で作付けを禁止という報道)を見ますと休耕田を含めた田起こしと水張り、畑の鋤込みという農作業(必ずしも通常の作付けを意味しない)を実施することにより、放射性物質の土中への浸透を促進し、来年度以降の作付けを容易にすると言った観点が抜けてしまい、農業再生対策が丸一年遅れてします懸念があります。
      因みに私は、あれだけの国土面積の表土をはぎ取りどこかの埋め立てると言った完全浄化作戦は、実現可能性がなくやるべきでないという立場に立っています。むしろ、汚染を前提にしてそれとどのように付き合っていくのかを考えるべきと考えています。
      年齢別の避難計画の方が現実的であり、住民総体の健康を守ることになると思います。なかなか為政者に放射線リスクの全体像を理解してもらうのは困難を伴います。彼らは、いろいろな意味でリスクを取りたがらない為、どうしても最も安心安全なレベルで一律に規制しようと考える傾向があります。