NHK BS-1 「医療ミスはなぜ起こるのか」

野上俊光先生@成尾整形外科病院(熊本)要約

(無断転載不可、商業的使用目的でのコピーは不可)

○森永先生@熊本よりCMINCへ下記番組放映の情報を頂き、MLでも話題になりました。見損ねた方の為に野上先生@熊本が番組の要約をアップして下さいましたので、多くの方々に「医療ミス」を考えて頂く資料のひとつとして御紹介します。 (安藤@荒川医院)
○NHK BS-1 PM10:00〜10:50

  1/6 医療ミスはなぜ起こるのか1 多発する過誤
        医療ミス問題の先進国アメリカの研究成果と改善の取り組みを紹介

  1/7 医療ミスはなぜ起こるのか2 責任は誰に
        病院の組織を体系的に改革することで医療ミスを防ごうとする取り組みを紹介 

  1/8 医療ミスはなぜ起こるのか3 沈黙する医師達
        医学会にはびこる秘密主義の問題点を浮き彫りに、意識改革の必要性を訴える

  1/9 医療ミスはなぜ起こるのか4 安全管理の新たな試み
        手術システムの管理・医師や看護婦の意識改革などを実例を挙げて紹介
○「看護事故」より
http://www.niji.or.jp/home/toku-f/boushi.html
「医療ミスはなぜ起こるのか」 NHK BS 
ダ-ロウ スミソンプロ イギリス 2000 製作  より。

○システムズ アプロ-チ
 システムを体系的にとらえて問題解決を図るというもの、単純な医療ミスなどあり得ない。複雑な原因がいろいろ重なってミスがおきる。単に医師を責めるのでは無く、なぜミスがおきたかを理解するようにつとめるというのがシステムズ・アプロ-チの考え方です。

○英ヘルスケア向上協会 ドナルド・バ-ウィック博士
 よい医者がいて、よい看護婦がいて、よい薬剤師がいれば全てうまくいくというものではありません。彼らは互いに支え合っていてその相互関係こそが重要なんです。責任の細分化やシステムの複雑さに原因があります。決して個人のせいではないのです。

○小児心臓外科医長 マ-ク・デ・レバル
(問題は些細なミスの方にあることが明らかになった)
 ごく些細なミスは、現場の医療チ-ムも見逃しがちです。その結果何も手が打たれないまま積み重なって、しまいには大きな影響を及ぼしてしまうものです。私が言っている些細なミスとは、例えば、手術前に赤ちゃんに食事を与えたり(OP前の赤ちゃん)する事です。この場合手術は延期されなければいけません。医療チ-ムのコミュニケ-ション不足があげられますね。外科医が勝手に時間を決めたりしたら麻酔科医に手術に間に合わないなんて事になるからです。
私たちはミスを率直に認め、過ちから学ばなくてはなりません。これが医療ミスを無くす唯一の道であることを医療関係者を始め、みんなに訴えていくことが大切です。

○危機管理責任者 ドニ・ハ-ス
われわれの病院で医療ミスが起こりました。これがその原因ですと明言すること、それがこの病院だけでなく医療全体の改善と全ての患者の安全につながるんです。

○麻酔科医 ジョ−ジ・マックレ-ン
 医療ミスは数多く発生しているというのに、われわれのケ-スは(ミスはないと言う結果になっていたが、自ら調査しミスがあったことを認め、謝罪したという事)いまだに特別な例とされています。つまり何万件ものミスは隠蔽され誰も口を開かず、何も手をつけられないでいるということでしょう。自ら過ちについて誠実に人間らしい対処をしたと褒め称えられ続けるわれわれが例外であるならいったいどんなことが医療現場でまかり通っているのか考えただけでも恐ろしいです。
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●1/6 医療ミスはなぜ起こるのか1 多発する過誤
        医療ミス問題の先進国アメリカの研究成果と改善の取り組みを紹介

本日は麻酔科医の登場が多く、登場した医師の半分近くが麻酔科医のようでした。
  • 麻酔科医の登場が多いので、このTVを見た人達の間では、以下の認識が広がる印象を受けました。
    • 麻酔科医の仕事内容をを少しは理解してくれるかも知れません。
    • 麻酔科医を医師として認識する人が増えてくる
      逆に
    • 麻酔科医の事故が多いと誤解する人が出る?
    • 麻酔科医ばかりが重大事故にかかわっている?と誤解した印象をもつかもしれません。

放映内容の要約(推敲する時間がないので羅列・長文です):
  • 3000例のケースを調べたところ医療ミスは約10%あった。医師がミスを起こす。しかし医師がその内容を公開することはなかった。しかし、問題点(ミスの内容)が明らかにされない限り医療ミスは改善されない。
どのような場で医療ミスが起こるのか。
  1. 医師の経験不足(経験の少ない医師)
      ここではPaul balack?という麻酔科医が登場:
     例示:
    •  IVHを挿入中に指導医が別の急患で呼ばれる。未熟な麻酔科医が一人で穿刺したら、緊張性気胸を発生。呼吸困難を起こした後で指導医が戻ってくる。緊急再穿刺で脱気し救命するも、数日後に死亡。
  2. 疲労: 処置のノルマ、があり、経験者でもミスを起こす。
     例示:
    • 17時間の手術のあと、次に控えた2例の産婦人科手術が開始。この時、患者を取り違えて手術が進行し、麻酔科医の確認で両者のとり違いとわかり、すんでのところで卵管けっさつをまぬかれる場面。
  3. 時間: 忙しすぎる。
診断を間違う可能性がある。
 例示1: 十二指腸潰瘍を既往に持つ患者が腹痛。実は心臓発作であった。
 例示2: 髄膜炎の併発を感冒と誤診した例
医療は完全な科学ではない。
   多くの人は誤解して、医療は車の修理と同じようなものと考えている。
  1. 診断が難題
     誤診することがある
  2. 診断できても治療できないこともある。
     医療は人間の死に打ち勝つことはできていない。

投薬ミスが多く、医療ミスの20%を占める。薬の取り違い、量の間違いが多い。
ここでも、また、麻酔科医が登場:名前や外観の似た、昇圧薬と制嘔薬の例示
  • 自分のミスについて率直に話すことが大切、とこの麻酔科医が話しかけます。

    続いて救急医療ERの現場が登場。骨折患者に鎮痛薬のモルヒネを静注してレントゲン撮影を計画した医師が登場。静注中に呼ばれたため、無意識に残りを全量注入。予定量の2倍を投与したが本人はまだ気が付いていない。X-P撮影が早く終了し、患者が戻った時には、チアノーゼがあり、呼吸数は2回/分。リバースで回復。
現在の医療は一人の医師で行うのではなく、複数の医師がチームを作って行うようになってきた。とのイントロが入る。個人を超えた複数の因子がある。と続き、麻酔科医のリー医師が登場。この人は裁判になったので、非難を受け有名になった医師とのこと。
  • 彼は癌の治療のため、くも膜下にビンクリスチン?を注入してしまい、子供を死に至らしめた。との罪。実は、個人のミスというより、病院のシステムそのものに欠陥があるとの内容に進むのですが。
     この小児はSABでの注入と静注の2種類の抗がん剤治療をうけていた。たまたま治療前にビスケットを食べたので、いつもの全身麻酔下の予定処置が延期された。いつもの担当医は勤務時間が終わるので、他の医師に治療を依頼。
     そこで担当した麻酔科医は手術室に運搬されてきた抗がん薬をSABで注入。ところが、いつもはくも膜下に入れる薬のみが手術室にくるはずだったのが、静注する抗がん剤も手術室に搬送されていた。そのため、本来は静注されるべき薬品であった薬物がくも膜下に入れられたため、死に到ったとの経過が紹介。訴えられていたリー医師は18ヶ月の裁判のあと、無罪と判断された。

この逸話のあと:
  • 「ミスを起こした個人を責めるのではなく、ミスを起こす医療システムに目を向けるべきなのです。」と話しがくくられ、本日の放送は終了しました。
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●1/7 医療ミスはなぜ起こるのか2 責任は誰に
        病院の組織を体系的に改革することで医療ミスを防ごうとする取り組みを紹介

今夜の要約をアップしてみます。
今日は、昨日ほどには麻酔科医が登場しませんでした。
麻酔科医がよく登場したのは、因習古い医学界の中で、麻酔科医達が比較的にオープンで前向きに医療ミスを減らす運動に取り組んできたためのようです。
第2夜:要約
  • 今までの医療ミスへの反応は「犯人捜しだった」。だれか一人に責任を押し付けて、病巣がなくなった、としていた。(バックに暗闇の森の中を逃げ惑う白衣を着た医師らしいイメージが映る)
  • 今夜の提案はシステム・ザ・アプローチ「System the approach」、「組織を体系的に改革する?」
  • 単純な医療ミスというのは、まずありえない。なぜミスがおきるのか、という原因究明へのアプローチが大切と呼びかけている。

責任があるのは、事故をおこした本人のみでなく、いくつかの要因が組み合わさった結果、として、事例がでる。
  • 事例:看護師、ミシェル、ジョンソンの利尿剤と塩化カリウムの取り違え例。
     夜間、人手の少ない時に心不全の患者が入院。利尿剤の指示で注射をする。走ってアンプルを手に取り、病室で注射をしていると、患者は苦しいと言い、呼吸が止まった。KCLを静注してしまったのだ。この25年勤続のベテラン看護師は辞職し、看護師の身分も保留された。(この後、アメリカでは死刑囚の執行の時にKCLが使われていると、その劇薬ぶりが紹介された)
     実は当時、KCLによる死亡例は多く報告されており、事故のリスクを避けるために、以下の工夫が推奨されていた。
     劇薬は鍵のついた薬品棚に置く。ほかの一般薬と同じところには置かない。アンプルのラベルに赤い追加のシールをつけるように、薬の販売元がシールを送付していた。これらの処置はなされていなかった。
     「能力のない者がミスを起こす」というクラシックな考えだと、ミスをした一人の人間にすべての責任を押し付ける。従来はこうだった。本当は、安全に働けるシステムを作ることが重要だ、と話が進みます。

上記の話に続けて、航空業界のミスをなくす努力を引用します。
  •  航空業界はパイロットに注意深くなれと頼んだのではない。事故の80%はパイロットのミスでおきているのだが、パイロットがミスをしても事故が起こりにくいようにシステム全体を作り上げてきたのだ。(麻酔科領域では有名なfail safe, false proof などの概念ですね。)
     事故をおこしたパイロットを罰する視点ではなく、どのようなミスが生じたのかを調べて、次に同じような事故がおきないよう、安全対策を練ることに視点を持っていったのだ、と。

医学も航空業界に学べる。関係者がミスを報告できるようにする文化・土壌をはぐくむことが重要。しかし、報告するものを「お前が悪い」と攻撃する因習がある。
  • 事例:薬剤師デニスは、数人の重症患者にある共通点があることにきづいた。彼が抗生物質と思って出していた薬が筋弛緩薬だったのだ。彼は悩んだが、同じ事故が続かないように、正直に上司に報告した。しかし彼は疎外され、孤立する。
     実は両者の包装は非常に良く似ていた。その上、同じような事故が他の病院でも起こっていたのだ。製薬会社から追加の通達が病院には届いていたが、この薬剤師デニスのところには届いていなかった。
     「事故を減らすには、(犯人探しではなく)システム改革が必要なのだ!」

このシステム改革にまず麻酔科医達が取り組んだ、と話が続き、アメリカ、ボストンのDr.エリソン・ピアスが登場。麻酔による死亡事故が多かった1960年代、Dr.エリソン・ピアスは死亡例についての記録を取り始めた。
  • 事例:18歳、女性。全麻下の抜歯術。麻酔開始十数分後に心停止。調べると気管挿管でなく、食道挿管になっていた。1983年。ピアスはアメリカ麻酔科学会ASAの会長となり、人為ミスが起こらないよう活動を続けた。その頃、重要な2種類のモニタが登場し、酸素飽和度を測定できるパルスオキシメータと呼吸中の炭酸ガス濃度を測定できるカプノグラフの利用促進を進めた。このような活動により、1950年代には麻酔の死亡率は1/3000例、だったのが、今では当時の1/100にまで低下した。

上記はアメリカでの事例だったが、ここで英国の重要な事故と裁判事例が挿入された。
  • 1947年、イギリス。
     膝の治療を受けるため脊椎麻酔を受けたセシルとローの2名は下半身麻痺の合併症にあった。当時の裁判長は、前の裁判で病院や医師に厳しい判決をしていたので、名誉挽回で、次回には病院や医師に厳しくしないつもりでいた。また、当時英国では国民健康保健システムが始まったころだったので、この保健システムを育てたかった。
     判決は、アンプルを滅菌していたフェノールが、目に見えない細かいひびから薬液の中に混入したために、このような下半身麻痺が生じたとの説を採用し、責任の所在はうやむやとなり、患者への保証もなかった、という。
     なぜ、或いは何が麻痺の原因だったのかは、それから、50年後に再検討するまで明らかにはならなかった。50年後、原因究明をすすめた医師?はアンプルのみでなく、注射針や注射器にも疑いの眼をむけた。患者の穿刺した皮膚面には潰瘍ができていたのだ。
     実は:当時の滅菌は「煮沸」で「硬水」を使っていた。硬水は湯垢が出やすいので、定期的に酸性薬で湯垢を落とす必要があった。湯垢を落とす酸性薬が残ったままの状態で煮沸消毒した注射器を使用したため、下半身麻痺になったのであろう、との結論であった。

エピローグ:
 医師達は医療ミスについては、口を閉ざし、公開を嫌う。
  • (日本でも、ひやりはっと報告が始まりましたが、正直者がバカをみるような土壌では、だれも報告したがらないでしょう。報告書の法的な保護がどうなっているのかも不明です。それでも報告データの蓄積が集まりつつあります。)
  • 患者の為に安全な医療を提供しようと改革を進めるならば、System the approach の道をとっていく(べきだ)。(System the approachは「改革を体系的にする」or「組織を体系的に改革する」でしょうか?)
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●1/8 医療ミスはなぜ起こるのか3 沈黙する医師達
        医学会にはびこる秘密主義の問題点を浮き彫りに、意識改革の必要性を訴える

医療ミスについてのTV特集も3日目になりました。本日は再び当直モードです。平均睡眠時間が6時間を割りつづけて、少しだれてきましたが、今回も要約してみました。
イントロ:
  • イギリスでは、年間30万件の医療ミスが発生し、そのうち4万人が毎年死亡しているという(推定値?)。 (イギリスの人口は約6000万人なので、同じ割合を日本に当てはめると、この2倍になる?)
  • 医療ミスは医療システムに原因があり、これを改善するには医師が医療ミスについて話し原因を確認し、改善する必要がある。しかし医師たちは口を閉ざしてきた。

「医療ミスが繰り返されるのは、医師達が医療ミスについて語ってこなかったためだ」と始まり、なぜ語られなかったかの分析に続く。
  •  <分析>
     医師は完全だとのイメージがあった。
     医療は聖域で口をはさむことはできなかった。
     閉鎖的な秘密主義があった。
     上下関係が強く、医師であっても上司には意見を言いづらかった。
     医師に対して、医師以外の身分(ナースなど)からは、なおさら意見が言えなかった。
     医師には「しきたり」があった。
     医師の間には連帯感があった---------などなど。

この後、ミスをおこした事例が紹介された。
 事故の被害者のみでなく、事故の加害者となった医師や看護師も、別の被害者となってしまう点が紹介される。彼らは相談相手がいないことが多いのだ!善意で努力しているのに、孤立し、心に深い傷を負ってしまうのだ!。
  • 事例:ベテラン看護婦がモルヒネの注射の指示を受け、病室に行き、注射をした。しかし、同じ医師から、まだ患者が苦しんでいると告げられる。実は隣室の別の患者に注射をしていたのだった。
  • 事例:産婦人科で開業していた医師。妊娠したと喜んで来た患者の尿検査を繰り返し実施したが、陰性だった。胎児死亡と判断し、D&Cを予定する。患者(妊婦)がやっと同意し子宮内をソウハしたところ、大きめの腕が掻きだされた。死亡時は妊娠6Wと思っていたのに、11wくらいの大きさだったのだ。病理検査に出すと、死亡時から、そんなに時間が経っていない組織とわかる。この医師は自分が胎児を殺したのではないかと深い挫折感、罪悪感に落ち込む。
     被害者のみでなく、加害者となった者にも、心の回復には長い年月が必要となる。悩みについて話し合うこと、相談することは最良の治療でもあるのだが、加害者となった医師には相談する場・相手がいない。孤立・孤独になる。
     のちに、この医師は Making Medical Mistakes という本を出版した。 しかし、彼が文献検索をしていて、驚いたことには、医療ミスについて医師が書いた物は殆どないのだった。沈黙の掟は続いているのだ!!

沈黙を続ける因子が紹介される。
  • 医療訴訟:イギリスでは年間30万ポンド、日本円で5100億円。
      医療ミスについて語ろうとすると、弁護士は医師を訴えようとする。この傾向は、医師が身を護るために、不必要と思う検査でも指示するようになり、さらに医療費を押し上げる要因ともなっている。
再び医療ミスについて話す必要がある、と物語が続きます。
  • 事例:産婦人科医、ジェームズ・ドライフは自然分娩予定の胎児を死なせた。
     胎児モニタが異常をしめしていたのだが、モニタの故障だろうと考えて、患児が異常なのだとは思わなかったのだ。分娩を早く進めておれば助かったかもしれなかったのに、という罪悪感からは一生逃れられないと告白する。ミスを犯した者も苦しむのだ。ミスを犯すまいと皆頑張っているのに、ミスはおこるのだもの。過失をあきらかに出来る環境を作ろう、と提案が続きます。

死亡率の高い分野;小児心臓手術の事例が2つ紹介されます。何事も報告し検討するのが表向きの姿。しかし、下の部下が正直に言うと犠牲を強いられる、と。
  • イギリスでの事例:麻酔科医Dr.ボルシンは、手術死があまりにも多いので、小児心臓手術チームを病院上層部に告訴した。
     本格調査が始まったのは、告訴から10年が経過してからだった。100人ほどの犠牲者が出ていた様子だった。とうとう外科医や病院長らが退職したが、告訴した彼自身もイギリスからオーストラリアに住所を変えることになった。
  • カナダでの事例:小児の心臓手術で10ヶ月に12人が死亡した。死亡率は他の似たような施設や手術内容の3〜6倍ほどであった。
     手術室のベテラン看護婦キャロルは、母親から子供をあづかり主術室に連れて行く役目を負っていたが、手術内容や死亡率の高さからいたたまれなく、ついに心臓手術医達を告訴する。しかし病院上層部は耳をかさない。さらなる犠牲者が続いて初めて、病院上層部は耳を貸すようになった。「看護婦が言っても、誰も耳をかさないのだ」という言葉が繰り返されます。
     ついに執刀医は手術中止を命令されますが、キャロル看護婦も、職場を辞めざるをえなくなります。
この事例のあと、
 ミスに慣れてしまうことは怖いこと、
 自らのミスから教訓を得ることがミスを防ぐために重要、
 医師が沈黙を破ることがミスを防ぐために必須、 と続きます。

また、
 人はミスを犯す
 ミスについて話す
 過ちから学べ
   そうすると、ミスを繰り返さない医療が実現される・・と繰り返しメッセージが出されます。
再び事例:
  • 今度は、死亡率を下げた心臓外科医の話しです。(「スイッチオペレーション」という言葉が紹介されましたが、私の知らない概念のようです。Googleや英語のサイトAlCで検索しましたが、わかりません。わかった部分を記入します。)
  • この心臓外科医は
    1. まず熟練した外科医を呼び、手術の詳細を学びました。
        50例ほど習ったあと、自分で執刀していきました。ところが死亡率が高くなったので、しばらく手術を中止して、検討しました。
       ここでスポーツ科学での成果が紹介されます。
        スポーツの世界で成功するには
         「高い技術力」に加え
         「集中力」
         先を読む「先見性」
         できるという「自信」
       これらが揃わないと成功しないのだそうです。
    2. そこで、この心臓外科医は再び技術を学びなおし、細部までこだわって研究しました。問題は些細なミスからおこることが多かったと紹介されます。
       その後、この外科医は世界でもトップクラスの心臓外科医になったそうです。そして、「スイッチオペレーション」を推進した、というのですが、この「スイッチオペレーション」というのは、特別なシステムを示しているのでしょうか?

プロローグ:
 過ちから学ぶ。この平凡なことが、医療界では実行されてこなかった。
 医療ミスをなくすには、「過ちから学ぶ」ことを進める必要があるのに。
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●1/9 医療ミスはなぜ起こるのか4 安全管理の新たな試み
        手術システムの管理・医師や看護婦の意識改革などを実例を挙げて紹介

第4夜のTVの話も今日で終わりました。医療ミスをなくす戦いは、始まったばかりですね。今日も寝不足のはずですが、皆様の声援の御陰で、眠気もなく、だるさも飛んでいきました。今夜も要約を書いてみます。
イントロ:
 医療ミスが毎年32万件もイギリスで発生している。ミスのない、安心して受けられる医療にしていきたい。  そのためには「ミスを個人の過失としてみるのではなく、さまざまな要因がからみあったものとして捕らえ、医療システムを安全管理の面から見直す方向にいくべきだ。
  • イギリスでの旧来型の事例:
     夜尿症を持つライアン少年は、検査入院して3日目に死亡した。家族が目にしたのは、体中に管の入ったライアンだった。敗血症になり脳死になったというのだ。病院からは、それ以上の説明はなく、誰も部屋に合いに来ない。説明をして欲しいという家族に、病院の反応はなかった。
     責任を回避しようとする病院側の姿勢に家族は悲しみといきどうりを感じた。家族は悲しみのあまり、息子を思い出す物を目にみえないところへ移し、一緒に住んでいた住まいも、息子を思い出して悲しくなるので転居した。
  • アメリカ、フロリダ州、マーチン病院での事例:
     手術室での話です。
     耳の手術のため麻酔を受けた7歳の少年ベン・コルグは、異常を示した。耳への局所麻酔を受けた直後から高血圧と頻脈が続き、心停止。一時は蘇生したものの、昏睡が続き、翌朝死亡したのだ。この時の病院側の対応は上記のイギリスでの例とは異なっていた。危機管理責任者のMs.Doni Haasや麻酔に関わった医師たちは、家族に容態をすぐ説明したし、葬儀にも出席した。麻酔に使用された物品も保管された。
     地元の検死官は小児の異常反応と判断し、新聞にもそのように報道された。しかし、原因が不明だったので、病院の危機管理責任者、Ms.Doni Haasは局所麻酔に使用された注射器に残っていた薬液を分析にだした。薬液量が少なかったので薬液の同定こそできなかったが、局所麻酔薬ではなかったことが判明した。さらに大学で残液を分析したところ、アドレナリンであることが同定できた。出血を抑えるために準備していたアドレナリンと局所麻酔薬を取り違えていたのだ。
     事故から約1ケ月後、Ms.Doni Haasは家族に連絡をとった。家族は弁護士とともに病院に行った。Ms.Doni Haasらは手術に準備していた2種類の薬が入れ替わっていた事実を率直に話し謝罪した。弁護士は、このように、病院側が自ら過ちを認めて真実を伝えてくるのは例外的なことだ、と家族に話した。
     病院では今後の再発防止策として、薬液を広口ビンに移し変えることを禁止し、使用直前にバイアルやアンプルから、直接注射器に吸うことにした。
     病院側はこの事例を学会で報告したり、講演会で繰り返し伝えたりした。この情報公開のおかげで、後日、救命例がでた。似たようなケースが他の病院で発生したのだ。講演内容を覚えていた職員が詳細を問い合わせ確認すると、薬品の取り違えが原因とわかり、適切な治療がほどこせたのだ。
     この病院のスタッフは「ここで自分達がやっていることは普通のことと考えていたのだが、他の殆どの医療機関からみると、例外的な対応とみられている」「ほかの何万件ものケースは公開されていない、それが残念だ」と話す。

医療以外の分野からの、安全管理手法の導入
 
 医療従事者に悪意はない。仕事中にわざとミスをしようとする人はいない。それにもかかわらず、ミスは発生する。
  1. NASAの安全管理対策
     目的は、個人の責任追及ではなく、原因究明と予防策をたてること。
     医療はかばいあう福祉事業ではない。医療は危険にあふれた産業分野である。
     医療従事者はリスクの高い現場で働く労働者である。
  2. 行動心理学者、ロバート・サイモンの手法
      サイモンは、ヘリコプターの墜落事故を半分以下に減らした。
    • 事例1:
       1980年代、ヘリコプターの墜落事故が多発した。墜落事故を調査してみると、連絡ミスがめだった。サイモンは連絡、連携訓練をヘリコプターのクルー達に行った。声にだして言う。再確認をする習慣をつける。これらの訓練でコミュニケーションをとる意識の改革、意識の向上をしていった。結果は事故率の半減として現れた。
    • 事例2:医療現場でも連絡の行き違いでミスが起こっていた。
       事例:心停止の蘇生中にCaCl2(塩化カルシウム)とKCL(塩化カリウム)を間違って投与し、蘇生できなかった。指示をもう一度確認しておれば、蘇生できていたかもしれない場面だった。
    • 事例3:
       外来患者の誤診例。髄膜炎の併発を単純な感冒と決め付けていた医師。3度目の来院時は救急車で、治療できずに死亡。
       事後調査をすると、医師に髄膜炎ではないかと話しかけていた看護婦がいたのだが、「診断するのは医師だ。何を言う!」というけんまくで言われたことがあったため、この時も疑いながら、口を閉ざしていたのだった。
       医師と(医師より密接に患者さんと接している)看護師は互いの言葉に耳を傾けること、コミュニケーション不足をなくすこと。
  3. 「現代の医療は産業」という視点;シミュレーションの導入
    • ハイテク機器の導入事例:
      • ここでは内視鏡(腹腔鏡)下の手術が紹介された。Key hole operation と紹介
      • 内視鏡を使った手術は瞬く間に広がったが、初期には慣れていないための技術的ミスが多かった。患者を練習台にするのではなく、小さな(靴)箱を使ったシミュレーションさらにはパソコンを使ったデモ訓練が有効である、などの発言が続く。
         麻酔科領域での実物大のシミュレーターを使った訓練も画面に紹介された。
        シミュレーターを使った訓練は航空産業や宇宙産業の分野で多用されています。そこで、この場面の締めくくりは、以下のように続きます・・・・・
         宇宙産業は安全性との闘いである。 ミスの原因を明らかにすることは重要である。経験は最高の教師であり、高価な代償を払って得た教訓である。(これを共有し生かさない手はない) (高価なシミュレーション技法を導入するメリットがある)

(しかし、)医療界では内部報告が個人の責任追及になりやすい
  • 事例:(内部報告を義務づけている病院で)雇用された看護師が、3回ミスをしたらクビと言われる。
     ミスも1回目、2回目までは正直に報告したが、そのたびに矯正懲罰訓練の目にあう。とうとう3回目のミスをおこした。この時には、事故には進展していなかったこともあり、自己嫌悪に陥りながらも、報告しなかった。同僚の看護師に相談したところ、多くの同僚が、2度目までの報告で、3度目からは、ミスの報告を止めていた。
「このような、個人の責任を追及するシステムでは、(改善が進まず)病院を危険な場にしていく」
  1. 提案と解決:匿名での内部報告システム
        自分の上司や病院ではなく、外部のNASAに直接報告を送る。
  2. ミスを公開したほうが、隠すよりも事態を好転した事例:
      ミスを隠す傾向は、訴訟費用を恐れての事が多い。
ミスは言いにくいものです。しかし、ミスを率直に伝えると、事態は好転することが多いのです。
  • 事例:再び番組冒頭の、敗血症で死亡したライアン少年の話に戻る。
     夜尿症の検査で死亡したライアン少年の両親は、子供の死亡から1年3ケ月後に病院側から呼ばれ、説明を聞くことができた。
        親の気持ちは:謝ってほしい
               死亡した理由、原因を説明して欲しい。
        (この気持ちは世界中、共通点があるのではないでしょうか)
      遺族にとって、慰謝料の金額などは、大きな問題ではない、と続きます。
     病院側は、率直に謝罪してきたのでした。両親が考えていたよりも率直に。

エピローグ:
  • 遺族との話し合いは簡単ではありません。
  • 治療される患者の立場に立ち、他の分野の安全対策を取り入れ、ミスの無い安全な医療の実現に向かっていきましょう。

     (最終画面に、医療ミスでなくなった人の墓が映し出されています)
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