「第16回医療とニューメディア・シンポジウム」
  • 主催:東京と医師会
  • 後援:日本医師会
  • 協力:医療とニューメディアを考える会
  1. 日時:平成14年11月21日(木)午後2時〜4時半
  2. 場所:都医会館講堂
  3. テーマ: 「各地区医師会IT化の取り組み」
  4. 開会挨拶   東京都医師会長  佐々木健雄
  5. 来賓挨拶   日本医師会長   坪井栄孝
  6. 講演:
    1. 「出来ることから−地区医師会IT化−」・・・スライドはこちら
                   
      中央区医師会理事   安藤潔
    2. 「地区医師会情報網の横のつながり−文殊ML−」
                   
      渋谷区医師会理事   宝樹真理
    3. 「地区医師会(杉並)におけるIT化の試み」
                   
      杉並区医師会医療情報推進委員会
                           
      委員長   川内邦雄
    4. 「情報化構想と現実の課題」
                   
      豊島区医師会理事   山下巖
    5. 「医師会同士でネットを組む!」〜イントラネットとインターネット〜
                   
      板橋区医師会理事   宮川美知子
    6. 「(社)中野区医師会IT化の取り組み」
                   
      中野区医師会事務局  篠山明男
  7. シンポジウム:
      
    テーマ:「各地区医師会のIT化への取り組み」について
  8. 質疑応答
  9. 閉会挨拶   東京都医師会副会長  奈良橋喜成


●医療とニューメディア・シンポジウムとは、
  1. 参加者:医師会員、と関係企業等
  2. 後援:「医療とニューメディアを考える会
  3. 懇親会参加者:講師と都医役員等

●昨年度の東京都医師会第15回医療とニューメディア・シンポジウムは・・・、
  • 「ORCAの目指すもの」−日本医師会のIT戦略
    1. 「ORCA」の日本医師会情報化策における位置付け
        西島 英利(日本医師会常任理事)
    2. 「開発コードネームORCA」の具体的説明
        石原 謙(日本医師会総合政策研究機構研究部長)
    3. ORCAの実験に参加して
        大橋 克洋(東京都医師会医療情報検討会副委員長)
    4. ITのグランドデザイン
        遠藤 弘良(厚生労働省・医療技術情報推進室長)
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(1)「出来ることから−地区医師会IT化−」
       
中央区医師会理事   安 藤   潔


 当医師会は交通網が発達した都心にあり、会員数も200名程度とさほど多くなく、昭和22年の発足以来、地道に築いてきた情報整理・伝達の流れがそれなりに機能している。 即ち、会長、両副会長、庶務担当理事、会計担当理事から構成される総務連絡会が毎月3回開催され、事務局に届いた40通ほどの書類に目を通しながら、夫々が担当している業務や各部担当理事からの相談事項などにつき協議する。理事会直前には議題を作成し供覧すべき資料を揃え、毎月1回の理事会では15名の各部担当理事から業務報告があり、夫々の協議事項を多数の資料を眺めながら全員で詳細に検討する。理事会終了後には直ちにこれらを議事録に纏め、毎月末には各種資料と共に会報として全会員に郵送し、それを補足する形で毎月中旬、区医ニュースを発行している。
 さて、これだけを見ると簡単なようだが、地区医師会では会長を始め全ての会員は自らの日常診療をこなしながら、無償の行為として医師会活動に協力している。厳しい医療費削減の流れの中、地域における地区医師会の担うべき役割が急増している今、事務局を含む医師会内の役割分担及び意思疎通を大幅に効率化しないと、殊に執行部が遺漏無く医師会業務を全うすることは困難になりつつある。
 そこに登場して来た新しい情報伝達のツールがインターネットである。当医師会では平成10年、医療系メーリングリスト(ML)に参加して「インターネットは時空を超える」に目からウロコ状態だった私の顔を見て、当時の会長が「そろそろ医師会ホームページでも作ろうか」と言ったことから始まった。そこで全国各地の先達にMLで相談しつつ、区HPとの連携を念頭においた素朴な瓦版のような医師会HPを作ろうということになり、ML仲間のプロに協力を要請してHP作成に着手した。
先ず「魁より始めよ」で、会長以下執行部の先生方にパソコンを購入して頂き、医師会館事務局のパソコンへも回線を繋いでメールのやり取りを始めた。また、システム委員会を発足し、紙の資料は配らないという方針のもと、同報メールで事前に資料を配布、意見の調整もMLで済ませ、委員会当日はプロジェクターをパソコンに繋ぎ、事前調整の成果である医師会HP試案のサイトを眺めながら討論し、翌年7月に中央区医師会HPを公開した。このような経緯の中で中央区医師会MLを発足、また、HPの作成・更新も自ら出来るようになり、会員専用HPの開設、調査部担当理事となった平成12年には調査部ML及びHP、50歳以下の会員有志による若手の会ML及びHPを開設した。同年末、補正予算案関係資料が医師会にも送付された際、会員へのこの事業の広報から始まり、アンケート調査、事業計画書や交付申請書作成、機器の購入など、調査部担当理事として執行部との意見調整、会員からの意見収集などには、これらのHPやMLが非常に役立った。また、この時に文殊MLが発足、他の地区医師会の先生方、事務の方々からも貴重な情報・御意見を頂くことができた。
 平成14年に広報部担当理事となり、より開かれた医師会を目指す第一歩として、先ずは会員に対してより開かれた執行部作りをしよう、ということで総務連絡会には欠かさず参加し、調査部担当理事時代の経験を活かすことにした。まず事務局に届く書類は直ちにPDFファイルとしてサーバに保存、タイトル一覧表を作成して役員のみならず会員もこれらを会員専用HPから閲覧できるようにした。次に事務局でもHPの作成・更新が出来るようにして、総務連絡会及び理事会にも夫々専用のHPとMLを開設した。以上により医師会内で双方向性に意見が出し易くなり、理事会議事録などの資料の作成・管理・閲覧も容易となった。殊に多忙な執行部にとっては、過去の資料をいつでもどこでも簡単に各HPから検索して参照できる意義は大きい。
現在、まだHPに整理した議事録などは印刷して会報や区医ニュースに同封しているが、カルテなどの保管スペースにも苦慮するビル診の会員も多く、既に広報部委員会、調査部委員会では紙資料を全廃して事前に資料は専用HPに掲載、MLで協議してから委員会を開催し、物事を決定し、会員専用HPに報告しており、今後、他の委員会や理事会、総務連絡会でもこれに順じて行けば、紙資源の節約にも貢献するものと思われる。
 最後に医師会IT化に向け会員が自費購入するパソコンだが、医業経営が殊に厳しい都心では、各種医療情報の収集、診療連携への活用、そして電子カルテやレセコンなど、同時に日常診療に充分活用できるようにサポートすることも大切である。会員個人の力には限界がある。地区医師会という人の輪を生かし、インターネットにより双方向性の情報・意見交換を活発化し、夫々の力を効率的に持ち寄って医師会活動を有意義なものにして行く試みが、医師会組織率の低下が懸念される今、重要であろうと考える。

(2)「地区医師会情報網の横のつながり−文殊ML−」
           渋谷区医師会理事   宝 樹 真 理
はじめに
メディアとは、辞書によると「媒体。手段。特に、新聞・雑誌・テレビ・ラジオなどの媒体、「マスメディア」「マルチメディア」とある。またメディアミックスとは「宣伝を効果的にするために、新聞・雑誌・テレビ・ダイレクトメールなどのいろいろな広告媒体を組み合わせること」とあり、情報交換の手段としての新しいメディアをニューメディアと理解し、そのコアはインターネット技術であることは論を待たない。私に課せられたテーマは、そのニューメディアを使い、一地区医師会がどのように変化、改革していくかを提示することと考える。
会員数500名余の渋谷区医師会におけるニューメディアの利用法、最終目標、現時点での達成度、新しい挑戦などを示したい。

これまで
 医師会事務局から会員への各種通知文書は、これまでほとんど郵送である。日本医師会、東京都医師会、保健所、行政などから送付される資料は郵便物であり、必ず「貴下会員に周知のほどお願いします」とか「周知のほどご配慮ください」と記載されている。つまり各種団体からの通知の再配布が、事務局の大きな仕事である。周知の要請文書は当然1部なので、会員数分をコピーして、郵送する。したがって、厚生労働省→日本医師会→東京都医師会→渋谷区医師会→各会員まで周知されるまでに相当日数を要する。この周知文書の配布は配布元が紙資料の郵便で行う限りなくならない。しかし、最近では厚生労働省のホームページを見ると、ほとんどの資料はデジタル化されて、掲示されている。デジタル化された資料を全国医師に配布することは簡単だが、できない訳があるのだろう。つまりインターネット利用環境を持たない医師に周知できないからだ。渋谷区医師会員500人余全てにインターネット利用環境が整うにはかなり時間がかかる。世代交代も必要だろう。
いま渋谷区医師会でニューメディアを利用した医師会改革は、昨年渋谷区医師会長が「IT化宣言」を行い実行に移された。まだ始めの一歩が踏み出されたところだ。具体的な目標は(1)医師会事務局の事務効率向上、合理化のために管理係、事業係、看護学校、看護部の事務業務の規格を統一し、同じデータの再入力という無駄を省くために、各種帳票の入力データはRDB(リレーショナルデータベース)として管理する。(2)事務局に電子メールを用意し、会員からの電子メールでの問い合わせに対応できる。(3)会員相互の情報連携のために医師会員のメーリングリストを起動する。(4)会員などが研修会等で利用する医師会館講堂、会議室などでインターネット利用が可能。講堂、会議室でインターネット接続画面を会場の聴衆に見せるために液晶プロジェクターなどを利用できる、とされた。この目標が現時点でどこまで達成できたか、また達成できない部分については、その理由を考察し、提示する。

新しい試み
 既存の組織で、それまでの情報システム、あるいは通信手段を変更するのは容易ではない。医師会はもともと会員の多くは開業医という個人事業主の集まりであり、トップダウンで物事が決まりにくい。したがって、既存のシステムを維持するのが組織の目標となることが多い。だが国をはじめとする周辺社会は既にインターネットを利用して業務の効率を図っている。しかい一地区医師会だけでインターネット利用を進めるのは困難が伴う。技術的に地区医師会専用のインターネットサーバーを管理運営できるところもあれば、インターネットに繋がらない医師会もある。演者は中央区医師会の安藤先生、小石川医師会の中村先生とともに、地域での医師会活動をより効率的・効果的に行なう為に、インターネットを活用して、都内区市及び大学医師会の有志による前向き、且つ横断的な医療情報・意見交換を行なうことを趣旨とした文殊メーリングリストを開催した。その活動内容は以下のホームページに提示した。
http://www.cminc.ne.jp/tonaiml/toppage.htm
また、日本医師会の研究機関である「日医総研」が主体となって開発されたORCAについても、文殊メーリングリスト有志により業者説明会(10月30日)をインターネット会議室システムを使って実施した。当シンポジウムでは、その説明会の模様も提示する予定である。現状では、このシステムはどの医師会でも容易に利用でき、研修会、会議などあらゆる会議、会合に適したものと考える。
(3)「地区医師会(杉並)におけるIT化の試み」
       杉並区医師会医療情報推進委員会  委員長   川 内 邦 雄
 現在のインターネットを始めとする情報流通の進歩は、目を見張るものがある。しかし、医療の分野は、一般社会に比べて、この流通面でかなり遅れているのが事実である。
 医師会と言う分野で考えて見ると、この遅れは、更に顕著である事は周知の事実であろう。これは地区により、かなり差がある。地区毎でその進行度の分析を行うと、地方ほど先端的な試みを行っている。裏返しで言うと、都心部であればある程に、この進歩には遅れを取っているのが事実の様である。
東京では、本来であれば、都医あたりが中心になって、これらの啓蒙、教育を行って頂ければ良いのであるが、現実には所帯が大きすぎ、色々と動きも取れない様であった。
杉並区医師会は、曽根田新会長の号令の元、この遅れを取り戻すべく、現在まで様々な試みを積極的に行っている。
 区医師会所属の以前よりのインターネット小委員会を、H13年より正式な「医療情報推進委員会」に格上げし、委員の人数も増強し精力的に活動を行っている。
 具体的には、地区会員のコンピュータの意識調査を行い、このデータを元に、デジタルデバイドを一人でも少なくする活動を行っている。定期的なパソコン講習会の開催、毎月この方面の先駆者を招いての講演会、地区医師会ホームページ、メーリングリストの作成、最新で新鮮な医療情報の入手と流通などである。
 パソコン講習会は、当初は委員などの個人の機器などを持ち寄って頂き医師会館で行っていたが、非常に効率が悪く、トラブルも多かった。途中からNTT新宿の厚意で会場を使わせて頂き、ここで月に2回、定期的に講習を行っている。しかし講習を重ね、受講者が増えるに従い、様々な問題が出てきた。各受講者の技術取得の進度に差が出てしまう事である。この為にレベル毎に分けた講習の必要性が出てきた。これらの対策も兼ねて、隣の中野区医師会と共同で各レベル毎の講習を行う形式を試みている。また半年毎に、土曜日の午後から夜までの通称「地獄の6時間特訓」講習で、受講経験者に復習、会得した知識の整理をして頂いている。
 また、各地区医師会でのパソコン講習会用の「共通化テキスト」の作成、車の教習所方式の段階的技能取得、受講証書の配布など安定したシステムが完成しつつある。
 講演会に関しては、積極的に文殊などの都内近郊の医療情報担当者連絡網を使い、他地区からの受講も可能なシステムが出来、現実的に稼働している。こちらも既に十数回の講習会を開催している。また最近では、この流れの中で、埼玉県朝霞地区医師会の講演会の内容を、TV会議システムを使用して県内各地ばかりか、島根県医師会にもオンライン配信する試みにも成功した。
これらにより、従来の区割り、医師会毎の縦割り制度を超えた交流が実現している。
 メーリングリストの作成に関しては、既にどの地区でも行われているが、ホームページと同じく、実際には出来上がってから後のコンテンツの内容で、その価値は決まると思われる。この為、当地区では、出来る限り新鮮な医療情報の取得に力を注いでいる。この結果、現在の流通量は毎日20-30通であり、演者の知る限り、その速度、内容は日本でもトップの内容と思われる。特に保険改正、厚労省関係の通知、介護保険関係の情報に関しては、ほぼ即日に流通させている。現在、当地区のメーリングリスト登録会員は8/12現在146名であり、まだ本地区会員の2割強程度の人数である。今後、更に広報を行い、登録会員増強の為の啓蒙も行って行く所存である。
 これらをふまえて、都内と言う、本来であれば日本の情報の中心であるべき地域における一つの地区医師会が行っている試みについて、事例を挙げ、報告させて頂く。

(4)「情報化構想と現実の課題」
         豊島区医師会理事   山 下   巖
豊島区医師会のIT化の取組みと検討中のプロジェクトを紹介すると共に、そこから見えてきた課題について、考えてみたいと思います。

1.通信手段の整備
 つい2年前まで、医師会からの書類は、10人程度の班の中で順繰りに回覧されており、申込みが締め切られてから回覧が到着するという現象も見られていました。平成12年より全会員にFAXが導入され、さらに一足飛びに、希望する会員に電子メールで回覧情報を伝達することが可能になりました。 
こうなると、情報提供の律速段階は理事会執行部となります。原則として、全ての情報にフリーアクセスを保証し、重要な情報は咀嚼して送り出すという2段階のシステムが理想です。医師会に来る膨大な情報のうち、何を伝えるかを考えていくと、情報とは何か、プライバシーとは何か、報道の意義、といった哲学にぶつかります。情報に対する意識の改革が必要であることにも気づかされます。地区医師会でも報道官の機能を担う理事を置き、積極的に会内・会外に広報をしていくことが必要と思われます。
医療の現場に最も近い地区医師会は、双方向で意見交換がなされうる場であり、またそうでなければ、存在意義はありません。平成13年からはパソコン部の運営で医師会員のメーリングリスト(ML)が生まれました。医師会本体がMLを管理していないことには意味があり、発言の正確さや責任を云々することなく、本音が素早く伝わるというMLの長所を生かすための仕組みと言えます。
一方、平成14年に発足した理事会MLは20人程度のクローズドなものなので、医師会MLとは性格が異なります。当初より医師会長自らが、「今月の課題」や「医師会長会議報告」などをアップし、リーダーシップを発揮しています。電子メールを利用していない理事にはMLの内容をFAXで通知することで、情報伝達に偏りが無いよう努めています。

2.医療情報検討特別委員会
それまで総務庶務委員会の一部として行われていたIT化ですが、各種IT関連の補助事業をきっかけに、専属委員会が必要との認識が生まれ、平成13年に特別委員会が発足しました。ホームページの更新や医療情報ネットワークのあり方について諮問を受け、構想を練る一方で、情報化の情報も収集していきました。全国医療情報システム連絡協議会(全医協)・地域医療情報ネットワークシステム研究会(COMINES)・広域医療情報研究会(広域)などの情報関係の会は、多くの刺激を与えてくれました。
地域ネットワークについては、数度の議論の末、「都市型医療情報化構想」(後述)がまとめられ、IT化した将来像を考えるたたき台ができました。また、都立大塚病院との電子メールアドレスの交換を企画し、新しい病診連携の形を考え始めました。 

3.都市型医療情報化構想
 住民健診のデータは、電子化された状態で区が管理していますが、膨大な過去のデータは利用されることなく眠っています。この医療情報をデータベース化し、都立病院と地域医療機関が患者の同意のもとアクセスし、情報を共有することを提案しました。この構想の特徴は、システムが軽いこと・既にある医療情報を活用するという点で、運用経費が少なくて済むことにあります。また、情報を住民の居住地に置くことの意味は、一つの基幹病院に多くの診療機関が依存する「一対多」のシステムではなく、多くの病院と多くのかかりつけ医療機関が複雑に絡み合う、都市固有の「多対多」の関係を想定したシステムということができます。さらには、昨今再編成が行われつつある都立病院群を地域医療の基幹病院として位置づけ、ネットワーク化することで、広域の病診連携システムが生まれることを期待させるものでもあります。
構想が出来た段階で、都庁の担当者(当時・衛生局病院事業部:現・病院経営本部)と意見交換をする機会を得ました。しかし、都立病院の情報システムは未だ個別の整備段階であり、まだその先は考えておらず、役所の性質上予算が付かないうちに先走ることはなかなか出来ないという返事でした。ここから先は地区医師会単独では如何ともし難く、都庁のカウンターパートである東京都医師会レベルで検討・交渉をお願いしたいテーマです。並行して、健診事業の23区相互乗り入れを進めると、より円滑に機能することが期待されます。地域医療機関との連携という観点を忘れずに都立病院構想が進むことを期待したいものです。

4.都立大塚病院とのIT連携
 豊島区の基幹病院である都立大塚病院に医師会員とのメールアドレスの交換を提案しました。これまでも医療連携のための懇親会は各種行われてきましたが、さらに一歩進めて、日頃連携している前線の病院医師と、電子メールを用いて直接交流することがこのプロジェクトの目的です。提案の後、数ヶ月の間、病院内で真剣に議論して頂きました。患者さんのプライバシーの問題・カルテへの添付が可能かどうか・パソコンの使用頻度に個人差が大きいこと・院内LANがインターネットと接続しておらず、外来で通信できない等々、障壁になることが山ほど出たそうです。しかし最後は、「とにかくやってみよう」との英断で、大塚病院側からは院長をはじめ29名、医師会側からは49名の参加者が揃いました。電子メールを手段として、実のある交流を実現し、地域医療のco-workerとして共通のアイデンティティーがもてるようにしたいと考えています。このプロジェクトを推進するために、「IT連携懇談会」を発足させ、医師会と病院医師と医療連携室とが参加して議論をする場を設けました。そこでの提案により、MLが組まれることになり、このMLに連携室が加わることで、医師の人事異動や専門の内容・空床情報などを随時アップすることになっています。この仕組みが病と診の距離を縮めることになればと期待しています。

5.おわりに
 現状では、患者の医療情報をネットに乗せることには大きなリスクを伴います。IT化の利便性よりも、単純ミスを含めた情報漏洩の危険性の方が、上回っていると言えます。この点が技術的・社会的に克服されるまでの間、IT化は、医師同士の情報交換の有力な手段として活用されるものと考えています。
(5)「医師会同士でネットを組む!」  〜イントラネットとインターネット〜
                 板橋区医師会理事   宮 川 美知子
 IT産業がもてはやされ、産業界で注目を浴びて久しい。公的機関、民間を問わず、コンピュータによるネットワークが盛んに作られるようになった。某企業では、連絡や情報収集をコンピュータネットワークで行うことにして営業所を廃止、パソコンの使用方法がわからない職員は必然的にリストラされたそうである。
 そのような話しを聞いても、全く現実味が無かった我々板橋区医師会が、コンピュータネットワークに関心を持ったのは1つの補助金であった。平成12年に補助金の話しが持ち上がってから、板橋区医師会イントラネット(愛称:imedas)ができるまでの経緯は、東京都医師会雑誌第54巻第7号(後記)の通りである。より秘匿性の高い情報を扱うにはイントラネットが適当であるという判断から、イントラネットを採用した。平成13年6月13日にimedasがスタート、当初のサービスは医療機関情報提供がメインで、医師会員である360余りの医療機関全ての詳細な情報を掲載した。その他に医師会の会議スケジュール:今月のお知らせ:学術講演会情報:掲示板:メールサービスなどがあった。予算化するにあたり、「一体、何人位が利用申し込みをすると考えているのか?」という質問がくり返されたが、全く予想がつかず、準備段階で行ったアンケートでの利用希望者が76名だったことから、利用申込を100名と仮定して予算が組まれた。実際には、imedasスタートから十ヶ月後の本年3月末の利用申込者は173医療機関(大学病院:都立病院を含む)で48%、その後も少しずつ申し込みは増え、8月末で180医療機関を越えた。
 imedasを1人でも多くの会員に利用していただくために、パソコン講習会をくり返し開催した。定員十名とし、1人一台のパソコンを利用した講習会は、初年度28回開催された。参加者は比較的高齢の会員が多く、80歳以上の会員の参加も認められた。同時に、設定などがわかりにくい会員のために、初回に限り医師会が費用を負担する会員無料出張サービスを行い、初年度の利用者は20人であった。また、「ネットワークにゅーす」というA4版一枚のお知らせを定期的に発行して、常にその存在を会員にアピールし、同時に質問や苦情も積極的に受け付けた。
 苦情の中には、Macでの不都合を訴えるものが目立った。板橋区医師会内では、Windowsの利用者が7割、Macの利用者が3割であったので,Windows、Mac両方で使えるようにすることを条件に業者にソフトを開発してもらった。しかし、開発業者がMacに詳しく無かったため、うまくトラブルに対応できなかったことが原因と思われた。また、複数のパソコンでLANを組んでいた場合に、出張サービスを行っても、なお問題解決に時間を要した。このような苦情や問題点については、業者任せにせず委員会のメンバーが解決策を話しあったりした。板橋区医師会では、imedasスタート後の現在も業者や医師会事務が同席して、委員会を定期的に毎月開催し、現在の利用状況の報告や、問題点の討議等を活発に行っている。
 このように板橋区医師会内でのイントラネット確立を進める一方で、平成13年度末には、城北4区(練馬区:豊島区:北区:板橋区)医師会のコンピュータネットワーク作りにも着手した。これは、東京都医療機能連携推進事業(東京都委託事業)の幹事区が板橋区であること、この事業は6年間で区西北部二次保健医療圏のコンピュータ等によるネットワークの充実を目標にしており、幹事区である板橋区医師会はこれを進める必要があったためである。平成13年度は本事業の4年目であることから、城北4区の地区医師会に協力をお願いして、平成14年2月に初会合を開催し、城北地区医師会医療機能連携協議会を設置し、業者選定などの準備を行った。城北4区の地区医師会を結ぶコンピュータネットワークの基本方針は、?@インターネットを使うこと、?A医療機関情報にこだわらないこと、?B地区医師会員のみならず西北二次医療圏内にある大学病院や都立病院にもネットワークに参加してもらうこと、そして?C情報交換や電子会議室のような機能を盛り込むことである。城北4区の地区医師会では、各々独自のネットワークを組んでおり、これらと赴きが異なる4区医師会全体のコンピュータネットワークを作ることが希望である。
 最近、板橋区医師会主催のパソコン講習会を受講した会員80名にアンケートを実施した。回答者のほとんどは初心者で、しかも高齢であると思われた。回答率72.5%で、「imedasを利用して医師会内の情報を検索するが、メールはほとんど利用しない」、「imedasのようなネットワークで医師会の情報提供を行うのは、時代の流れである」とした会員が、約40%認められた。これらから、コンピュータを利用しない会員にも十分な配慮をすれば、医師会でコンピュータネットワークを利用して情報提供を行うことは可能であると考えた。

<imedasスタート後に行ったこと>

毎月一回コンピュータ委員会を開催(平成14年度は、年10回)
パソコン講習会実施
 (平成13年6月?平成14年3月の間で28回、平成14年は毎月一回)
業者による出張訪問サービス
ネットワークにゅーす(A4版1枚)を定期的に発行(臨時増刊号も)
医療機関情報の一斉更新(年1回12月?1月に実施)
新しい企画の登場(支部コーナーなど)
使いやすい様にバージョンアップ(メールアドレス帳の作成など)
次年度の予算設定と契約
7)1周年記念イベント

<参加者を増やすポイント>

         1)「医師会員は無料」が原則    
         2)トラブルに対する迅速な対応
         3)初心者にきめ細かなサービス
         4)利用者に有意義な情報を迅速に提供
         5)事業を風化させない努力

<イントラネット構築費用>

初年度(スタート準備年度)
   総額約(     )円 (ハード1式、ソフト開発費用、電話工事1式など)
2年目(6月からスタート)
   総額約(     )円 (パソコン講習会、保守料、ソフト開発費用、出張   
                サービスなど)
3年目(平成14年度)
   総額約(     )円 (保守料(サーバリモート管理)、パソコン講習会、
                機器保守料など)
 


<今後の計画>

平成14年2月城北地区医師会医療機能連携協議会を設置。
    城北4区医師会(豊島区:北区:練馬区:板橋区)で、個々の医師会のコン
    ピュータネットワークとは別に、共通のコンピュータネットワークを造るこ
    とに着手。現在2?3ヶ月に一回協議会を開催。
東京都医師会雑誌 第54巻 第7号(13.8.15.)掲載文

(6)中野区医師会IT化の取組み
       中野区医師会事務局  篠 山 明 男
○平成10年度末 IT化夜明け前
 本会では11年2月にISP契約、Eメール・インターネット接続が可能になってからIT化がスタートした。以前から事務局にパソコンは数台あったが、パソコンは全てスタンドアロンでありデータの共有化・ネットワーク化は図られておらず、職員1人に1台のパソコンという状況にはなかった。

 その理由は、1つは業務の中心機器はワープロ専用機であったこと、1つは職員全員がパソコンを使いこなせるほどのスキルが無かったからである。
会員との連絡手段は専ら電話・FAXであった。インターネット環境が整った以降も、Eメールでの連絡はほとんどなく、事務局も常時接続環境では無かったため、連絡手段として活用するまでには至らなかった。

○平成11年度 IT化への環境整備
 11年4月より「ネットワーク推進委員会」が設置され、情報ネットワーク社会への対応、会員間ネットワークについて検討する場が初めて設けられた。そして7月1日、ついに本会のWEBサイトがオープン。
 http://www.nakano-med.or.jp/ 
 資料によれば、開設から年度末まで9ヶ月間のアクセス数は約4,500件、年度末3ヶ月平均アクセス数は約600件だった。

○平成12年度 ネットワーク化への胎動
 開設1年後の12年7月に、WEBサイト内に「会員専用ページ」を設置した。一般に向けた情報提供と会員向けの情報提供を区別し会員ネットワーク作成の第1歩を踏み出した。余談だが、本会サイトは外注製作だが、そのデザイン・レイアウトは、WEBデザインのテキストに収録されている。
 当時の委員会活動は、WEBサイトをどう整備し活用していくか、また活用してもらうかということが中心であった。WEBサイト開設の基本コンセプトの1つは本会会員ネットワーク構築のためであったが、この時点では遥か彼方の「遠い目標」に過ぎなかった。まだまだ、医師会として会員ネットワークとはどのようなものか、どのように構築すべきか模索している段階だったといえる。
 13年1月より「地域医療情報化推進事業」が始動し、ここから本会のIT化・ネットワーク化が急展開で進行していくのである。

○平成13年度 文殊=地区医師会の枠を越えた連携
 13年1月に発表された「地域医療情報化推進事業」(以下情報化事業)。この情報化事業が本会IT化に大きな弾みをつけたことはいうまでもない。委員会活動もそれまでのWEBサイト中心から大きな転機となった。
 申請書類の作成、機器の選定、納入、設定。業者との打合せ。会員意識・知識の底上げを図るため多数の講習会・講演会の開催。会員に興味を持ってもらうための9月から週2回のメルマガ「げつんもく」の配信開始。
 事務局体制も、ブロードバンド化、LANによるネットワーク化・データ共有化、パソコン1人1台体制などを行い事務処理の効率化を目指した。これらの膨大な検討・決定事項をスムーズに行うために5月に「委員会ML」を設置しメールでの意見・情報交換により委員会を運営していった。
 この情報化事業のお陰で「文殊ML」という都内地区医師会をつなぐ有志のMLに参加する事になった。このML参加により地区医師会という今まで感じていた枠・垣根を取り払う事になったと思う。
 WEBサイトも着実に進化をとげた。7月には一般向のデザインをリニューアルし、さらに使いやすく・見やすいサイトを目指した。携帯電話の爆発的な普及に対応し、ニーズの高い一部コンテンツをアイモードからアクセス可能にした。
 14年1月より会員向サイトはWEBサーバーを事務局内に独自に設置して管理・運営し、一般向、会員向サイトを区分しそれぞれのコンセプトを明確に具現化する準備を整えた。一般向サイトは13年度末までには安定して月平均3,000件以上アクセスされるようになり、中野区の医療情報提供サイトの1つとして認知され完全に定着しているといえる。

○平成14年度〜現在 地区医師会の連携強化
 文殊MLで確立された地区医師会の連携はさらに発展している。パソコン講習会「かよう会」は杉並区医師会と共同で習熟度段階別での定期開催を行っている。医療情報に関する講習会・講演会においては、本会単独開催でも参加会員の相互乗り入れはもはや試みではなく、スタンダードとなっている。
 6月の「ウイルス対策講習会」、10月のNTT-BBのBROBAを用いての「ORCA講演会・説明会」などは、「文殊ML」での地区医師会の連携の力である。都内の連携から全国レベルのネットワークを試み、講演会・会議のありかたそのものに変革を迫るエポックメイキングな出来事であった。

 委員会は「医療情報ネットワーク推進委員会」とリニューアルし、MLでのバーチャル委員会を実験的に隔月開催している。この4月からは医師会会員を対象としたMLがスタートし、約150名の会員が参加して情報交換・意見交換を行っている。会員からの各種連絡についてもメールでということが多くなり、連絡方法の1つとしてEメールが浸透しつつある。
 現在医師会では約150名の会員メールアドレスを把握しており、これは医療機関数(約270)の半分以上、総会員数(約430)の1/3以上になる。
以上かいつまんで簡単に時系列に述べて来たがここまでに至る重要なファクターをいくつか下記に述べる。

○地域医療情報化推進事業(情報化事業)
 この情報化事業により初めてインターネット・Eメールをした、という会員も少なくない。情報化事業に参加して機器を新規購入した医療機関は77医療機関に上る。医師会ネットワーク参加医療機関は135医療機関でスタートした。

○文殊ML(正式名称:東京都内医師会情報連携メーリングリスト)
 宝樹真理先生@渋谷区、安藤潔先生@中央区、中村宏先生@小石川の諸先生方が発起人になっていただき始まった「文殊ML」。これに参加できた事は大きな幸運だった。参加により他地区と情報などのいろいろな点で連携・連絡、交換が出来るようになった、ということは非常に大きいことである。
 今までは、「隣は何をする人ぞ」という感じであったが、情報交換が出来る事で、効率的・効果的な業務を行う事が可能になった。こうした連携により1つの地区医師会のリソース・マンパワーではなしえない事が可能になるのである。

○担当委員・担当理事
 本会での活動の中心にあるのは委員会であり、委員・担当理事の先生方である。現在担当理事2名、委員7名で活動しているが、皆ユニークでそれぞれ特長を持った多彩な顔ぶれの先生が集まられており、これが良い結果を生んでいると思っている。
 委員会の先生方の特徴として「フットワークが軽い」という事が挙げられる。担当理事・委員の先生方は事務局職員が動きやすいように多大な配慮をしてくださり、その事がますますフットワーク軽く動く事を可能にさせている。

○素人でも可能
 本会のIT化への取組みを振り返ってみて言える事は、「コンピュータの素人でもIT化はできる」ということである。自分の本業は事務局経理であり、パソコンは初心者である。その初心者でもこの程度は出来るのであり、逆を返せば医師会そのもののレベルが低いともいえる。医師会IT化はまだまだ始まったばかりだといえる。

○所詮は「ツール」
 「IT化」とはとても大変な難しいことをしていると思われがちだが、その実態は単なる「コミュニケーションツール」の1つ。電話やFAXと同じものだと気づけば、「実は結構大した事無いじゃん」、と気軽なスタンスになるのでは。
 勿論、このツールの持つパワー・パフォーマンスは電話やFAXを凌駕することはいうまでもない。

○今後〜希望を込めて〜
 今後も本会独自での、さらなるIT化を図る必要がある。それは単なるネットワーク構築だけでなく、日常診療に使える「ツール」の提案でなくてはならない。またこうした努力が「医師会加入のメリット」を生み出し開業医に選ばれる医師会になっていくものと信じている。
 ただ、地区医師会単独でできる事には限界はある。都医のIT化が進展する事によって本流の流れが一気に変われば、デジタルデバイドの狭間からの脱却も可能だと信じている。今後も文殊MLなど地区医師会の連携はさらに強めながら、都医のさらなるIT化に期待している。

 以上、中野区医師会IT化の取り組みについて述べさせてもらった。今後も東京都医師会そして各地区医師会のIT化が進み、ますますの連携・交流が進むことを期待して結びとする。